NATOがスウェーデンとフィンランドに期待する戦略的価値=熊谷徹
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NATO待望の「北欧2国加盟」 トルコの翻意が鍵に=熊谷徹
5月18日、スウェーデンとフィンランドは北大西洋条約機構(NATO)への加盟を正式に申請した。独日刊紙『ターゲスシュピーゲル』は同日付電子版で、NATOのストルテンベルグ事務総長の「両国がNATOに加盟すれば、我々に大きな利益になる」とのコメントを引用した。両国首脳は今年6月にマドリードで開かれるNATO首脳会議に招かれる予定だ。
同紙によると、両国は2014年にロシアがクリミア半島を併合して以来危機感を強め、NATOの軍事演習に参加するなどして、協力関係を深めてきた。さらに2月24日のロシアのウクライナ侵攻で、欧州の安全保障に関する状況が決定的に変わったとして、加盟申請に踏み切った。
独日刊紙『ヴェルト』は5月18日付電子版で「トルコ政府は両国の加盟に反対した。同国はその理由を『スウェーデンとフィンランドがクルド労働者党(PKK)などのテロ組織を支援しているため』と説明した」と伝えた。
米政治サイト「ポリティコ」は5月20日付で「トルコの反対の理由は、米政府との兵器購入をめぐる交渉材料を増やすためだ。トルコは米国のF35戦闘機の購入を希望しているが、トルコがロシア製対空ミサイルを導入したために、バイデン政権はトルコへのF35売却を拒否。エルドアン大統領は、スウェーデン・フィンランドのNATO加盟に同意することと引き換えに、米国にF35のトルコへの売却を許可させることを狙っている」と解説している。
独日刊紙『フランクフルター・アルゲマイネ(FAZ)』の5月13日付電子版によるとNATOは両国を加盟させることで、バルト3国の防衛態勢を大幅に強化できる。NATOはロシアがバルト3国を侵略する場合、まずベラルーシと飛び地の…
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週刊エコノミスト
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