ドル独歩高が思い出させる38年前の協調介入=岩田太郎
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「悪いドル高」の懸念に議論
米国の輸出や新興国に打撃も=岩田太郎
米連邦準備制度理事会(FRB)がインフレ退治のため積極的な利上げと量的引き締めを断行する中、各国通貨に対する米ドルの価値が急上昇している。これを巡り、「悪いドル高」になる懸念が議論されている。
英ケンブリッジ大学クイーンズカレッジの学長であるモハメド・エラリアン氏は5月17日付の英『フィナンシャル・タイムズ』紙に寄稿し、「ドル高の主要因は、他国より積極的なFRBによる利上げ予想、他国をしのぐ米経済の成長にひかれて米国に集まるマネー、そして有事の逃避先としての米金融市場だ」との見立てを示した。
その上でエラリアン氏は、「ドル高で通貨価値が下落した国々の輸出が増えることで世界経済が成長し、(インフレ下の)米国内で輸入品の価格が下がることは、表面的によいことだ。だが、ドルの急上昇は現局面で、ふらつく世界経済と不安定な金融市場に危険をもたらす」と指摘した。
また同氏は、「発展途上国にとり、エネルギー資源や食糧輸入のコストが上がり、対外負債返済のコストも上昇するなど、ドル高のリスクはさらに深刻だ。そうした小さな火種が合わさり、世界経済全体の成長が妨げられ、債務不履行や社会的・政治的・地政学的な不安定化につながる可能性がある」と警告した。
カナダロイヤル銀行の資産運用担当副社長であるアラン・ロビンソン氏は5月17日付の米経済サイト「マーケットプレース」の分析記事で、「中国やインドなどコモディティーの大口輸入国にとっても、ドル高の打撃は大きい」と述べ、米国からの大豆など商品輸出への悪影響を示唆した。
ブルームバーグのコラムニストであるギャリー・シリング氏も5月12日付の論評で、「IT大手の米マイクロソフトがドル高による海外売り…
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週刊エコノミスト
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