偏在する3大資源/1 リチウム 埋蔵量の4割はチリ
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EV電池に不可欠
塩湖の水を天日干しで生産/102
脱炭素化が急速に進む中で、電池やモーターなどに使われる希少非鉄金属の価格が上昇している。2050年のカーボンニュートラル(温室効果ガスの排出実質ゼロ)の柱となるEV(電気自動車)と再生可能エネルギー生産では、大量のレアメタル(希少金属)やレアアース(希土類)が頻繁に使われる。
具体的にはリチウム、コバルト、ネオジム、銅、ニッケルなどの産業用金属だが、いずれも関連需要の増加によって供給がにわかに逼迫(ひっぱく)してきた。
地学的に見ると、これらの元素はもともと含有量が少ないため希少金属と呼ばれてきた。すなわち、世界中にまんべんなく存在するのではなく、ある限られた地域に資源が偏在する特徴がある。それが国際紛争地にあったり、また政治的な思惑から意図的に供給をストップされたりすると、下流の産業では生産に困難を来すことになる。ここでは偏在する3大資源としてリチウム、コバルト、レアアースを順番に取り上げよう。
米地質調査所によれば、リチウムイオン電池用のリチウムに関する生産国比率は現在、オーストラリア55%、チリ23%、アルゼンチン8%である。2017年以降のリチウムの年間生産量は30万~40万トンで、19年にはオーストラリアの鉱山が採掘を開始して45万トンまで増えた。
リチウムの採掘には、リチウムの濃度が高い塩湖のかん水(塩分を含んだ水)を天日干しして生産する方法と、鉱石から生産する方法がある。チリとアルゼンチンでは、塩湖のかん水を天日干ししてリチウムを採取している。またオーストラリアでは鉱石を精鉱してリチウムを得ているが、鉱石から採取する場合は硫酸を鉱石に染み込ませて焼く工程で大量のエネルギーを使う。
製錬工程で高い中国への依存度
埋蔵…
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週刊エコノミスト
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