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資源・エネルギー 鎌田浩毅の役に立つ地学

偏在する3大資源/2 コバルト 埋蔵量も生産量も紛争地域に集中

Liイオン電池の正極材に不可欠

南鳥島南方で掘削試験に成功/103

 脱炭素化の柱となるEV(電気自動車)と再生可能エネルギーの進展には、レアメタル(希少金属)のコバルトが重要である。リチウムイオン電池の正極材に不可欠で、希少性が高く日本は国内消費量のほぼ全てを輸入に頼っている。昨今は超高速の5G(第5世代移動通信システム)時代を迎えて通信機器への活用も急増し、世界的に取引価格が上昇しつつある。

 コバルトは埋蔵量も生産量も紛争地域であるコンゴ民主共和国が最も多く、ロシア、オーストラリア、カナダ、キューバがそれに続く。生産量はコンゴ民主共和国に7割が集中し、精錬後のコバルト地金の生産量では中国が6割以上を占めている(本連載の第3回を参照)。そのため、安定供給が期待できるオーストラリアやカナダでの増産が計画されているほか、他の鉱物を採取した後の残渣(ざんさ)から少量のコバルトを取り出す方法も開発が進められている。

 一方、コバルト消費量が増えても、地学的にはその反対に埋蔵量が増えることもある。埋蔵量の定義は「経済的に採掘可能な量」であり、地球上に存在するすべての量ではない。技術革新で地質調査が進み採掘可能となれば、埋蔵量は年々増えるのだ。例えば、米地質調査所の調査によると、2016年のコバルトの全世界埋蔵量は700万トンで、この年に11万トンを採掘したにもかかわらず、17年の全埋蔵量は710万トンに増えた。

 もう一つ、コバルトは微量元素のため、コバルトだけを採掘するためには鉱山開発が進まないという問題がある。実際には、銅鉱山などで銅やニッケル鉱石の副産物として得られる元素であり、もとの鉱山の稼働状況に大きく左右される。現在は銅価格も高値圏にあるが、需要の伸びにコバルトの供給が追い付かな…

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週刊エコノミスト

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