資源・エネルギー鎌田浩毅の役に立つ地学

偏在する3大資源/3 レアアース 日本が「産出国」に?

レアアースの海洋探査

南鳥島周辺に高濃度の「泥」/104

 レアアース(希土類)とは、電気自動車のモーターなど精密機器の製造に欠かせないネオジムやジスプロシウムなどの総称である。蓄電池や磁石などの性能向上には必須で、スマートフォンや自動車・航空機などハイテク製品に幅広く使われている。これまで世界の生産量の70%以上を中国が占めており、安定供給が政治状況によって左右されるリスクが非常に高い。

 近年、レアアースが日本近海の海底下にも大量に存在することが分かってきた。東京大学の研究グループは2013年、南鳥島周辺の排他的経済水域(EEZ)内にある水深6000メートルの海底下で、レアアースを豊富に含む「高濃度のレアアース泥」を発見した。

 その後の調査で、南鳥島周辺の特に有望な海域(2500平方キロメートル)におけるレアアース資源量が、国内需要の200年分以上に達することが判明した。こうした有用金属が豊富に含まれるレアアース泥がどこに分布しているかを予測できれば、効率的な資源探査開発につながる。

 また、18年には早稲田大学の研究グループが、南鳥島沖のレアアース泥が約3450万年前に生成したことを明らかにした。しかも堆積(たいせき)物はさまざまなレアアースを濃集する魚の骨を大量に含んでいるため、レアアース泥の成因が調査された。

巨大な海山のふもと

 この時期は地球全体が寒冷化した時期で、南極大陸に大規模な氷床が発達した時代と一致し、さらに海洋の大循環が強まった時期とも近い。すなわち、新生代の前半は極地に氷床のない「温室地球」だったが、3400万年前ごろから南極大陸に大規模な氷床が発達し、現在のように両極に氷床が存在する「寒冷地球」へ気候モードがシフトした。高濃度のレアアース泥の生成は、その最初の…

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週刊エコノミスト

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