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資源・エネルギー 鎌田浩毅の役に立つ地学

能登の群発地震が数年以上続く可能性

石川・能登で震度6弱

群発地震を起こす地下の「流体」/105

 石川県能登地方で6月19日、震度6弱の直下型地震があり、その後も地震が続いている。観光名所「見附島」(石川県珠洲(すず)市)で島の一部が崩落するなどの被害が出た。地震の規模を示すマグニチュード(M)は5.2、深さ10キロメートルで起きた内陸地震である。

 能登半島北部では2020年12月から、同じ震源域で群発的な地震が起きている。その発生メカニズムは日本列島に典型的な直下型地震である。太平洋にある海のプレート(岩板)が日本列島を構成する陸のプレートの下にゆっくりと沈み込む際に、地盤の弱いところが割れて地震を起こすのである。

 ただし、能登半島の先端ではやや特殊なことが起きている。地盤深部の隙間(すきま)にしみこんだ水が上昇し、深さ約十数キロの位置にたまることで、地表をわずかに隆起させたと考えられている。国土地理院の調査によると、珠洲市で20年11月から今年5月まで4センチ隆起していることが分かった。

 珠洲市では20年12月以降に震度1以上の地震が148回観測され、震度4以上も5回起きている。よって、プレートによる典型的な地震発生のメカニズムに加えて、能登地方周辺の岩盤には新しく別の力が加わり、地震が頻発するようになったと考えられる。

松代では5年半も

 地下の岩石が水などの流体によって割れやすくなることは、地震学でも知られている。一般に内陸地震は地下の断層がずれることによって発生する。ここで外部から流体が断層面に入り込むと、断層がさらに滑りやすくなる現象が起きる。

 例えば、1965年から長野県松代町(現長野市)で5年半ほど続いた松代群発地震は、地下深部の高圧な水が割れ目に沿って上昇することで地震(最大M5.4)を引き起こした。水圧による岩盤の破壊が連鎖的に起こり、長期にわたる群発地震となったのである。

 金沢大学と京都大学のグループは珠洲市周辺の地下構造を調査し、震源が集中する地下では、深さ十数キロの位置に「電気を通しやすい」場所があることを突き止めた。実は、地下の岩石や地層には、水を含むと電気を通しやすくなる性質がある。よって、珠洲市周辺の地下には高温高圧の水などの「流体」があり、地下の断層面に浸入して地震を群発的に起こしているらしい。

 ちなみに、この地域の地下深部には2000万年ほど前にできた火山性の大陥没地(カルデラ)があり、ここにできた過去の割れ目を使って流体が上昇しつつあるという仮説も出されている。今回の群発地震が松代群発地震と同様のメカニズムかどうかは、今後の研究を待たなければならない。地震が数年以上も続く可能性は否定できず、今後も今回と同規模の揺れには注意が必要である。


 ■人物略歴

かまた・ひろき

 京都大学レジリエンス実践ユニット特任教授・名誉教授。1955年生まれ。東京大学理学部卒業。専門は火山学、地質学、地球変動学。「科学の伝道師」を自任。理学博士。

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