是枝監督が韓国で撮った「家族」三部作の3作目=勝田友巳
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映画 ベイビー・ブローカー
欠落を抱えて三者三様 母性を探すロードムービー
たいていの人が一つ二つは持っていても、同じ形は二つとない。千差万別の家族だが、今ほどその姿が揺らいでいる時代もないのでは。是枝裕和監督は独特の角度からこのテーマを描き、その本質を問い続けてきた。「そして父になる」では、父親が、育ててきた子供が他人の子だったと知らされる。「万引き家族」は赤の他人の集団が、家族のふりをして暮らす。「ベイビー・ブローカー」は、産んだ子供を自ら手放す母親が主人公だ。韓国で撮った韓国映画でも、是枝監督の同じ系譜に連なる3部作だ。
子供を育てられない母親が人知れず赤ん坊を預ける「赤ちゃんポスト」。雨の夜、ソヨンが赤ん坊を置き去りにするところから映画は始まる。違法な養子縁組をあっせんして仲介料をせしめるブローカーのサンヒョンとドンスが、赤ちゃんを横取りする。人身売買を捜査中の刑事スジンは、2人の現行犯逮捕を狙ってポストを見張っている。
ソヨンが不審を抱いたことから、サンヒョンとドンスは彼女を抱き込んで、一緒に里親探しの旅に出る。闖入(ちんにゅう)者の少年を加え5人となった一行を、スジンが尾行するロードムービーである。舞台が韓国でも是枝監督の人間と社会を見る目は的確で、笑いを交えつつ子供と家族を巡る深刻な諸相を示してゆく。
モチーフは明確だ。血がつながっているから家族になれるわけではないし、…
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週刊エコノミスト
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