教養・歴史アートな時間

生きた時代も国も異なる2人の画家が「重なり合う」=石川健次

《老木は残った》 1985年
《老木は残った》 1985年

美術 牧歌礼讃/楽園憧憬 アンドレ・ボーシャン+藤田龍児

つらく過酷な状況を乗り越え、私たちの心を癒してくれる=石川健次

 この木なんの木~とCMで聴いたことのある曲が口をついて出た。図版の作品を前に、だ。てっぺんにこんもりと葉をつけた1本の木……。本展を見て1カ月余りが過ぎた今もこの木が、正確にはこの木が描かれた情景が脳裏に焼きついて離れない。気になる木だ。

 本展が紹介する2人、20世紀前半のフランスで活躍したアンドレ・ボーシャン(1873~1958)と20世紀後半の日本で活躍した藤田龍児(1928~2002)は、生きた時代も国も異なるようにことさらつながりはないようだ。ではなぜこの2人?との思い、疑問は、会場をめぐるうちにゆっくり解けていった。

 苗木職人として園芸業を営んでいたボーシャンは、41歳のときに第一次世界大戦が勃発し徴兵された。除隊して故郷に帰ると農園は倒産、妻は心労で精神に異常をきたしていた。46歳になっていたボーシャンは「それまでまともに絵筆を握ったこともなかった」(本展図録)が、午前中は絵画制作に没頭し、午後は自分たちのための作物を育てる生活を始める。54歳で初個展を開いたのを機に絵が売れ始め、第二次大戦後にはその名声は決定的となった。

 一方の藤田は20代から画家として活動していたが、48歳のときに脳血栓で倒れ、翌年に再発。一命をとりとめたものの、右半身が不随となっ…

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週刊エコノミスト

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