現実的な銃規制策、超党派で協議=吉村 亮太
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乱射事件で犠牲者続出
高まる銃規制の機運=吉村亮太
親の仕事の関係で筆者は1970年代中ごろをワシントンDCで過ごしたが、当時、「ブレッツ」(弾丸)という名前のNBA(米プロバスケットボール協会)のチームが移転してきた。その後「ウィザーズ」(魔法使い)に改名したが、現在は八村塁選手が所属することから、その名は日本でも定着しているはずだ。
長年親しまれた看板を掛け替える直接のきっかけとなったのは、チーム・オーナーの親友だったイスラエルのラビン首相が凶弾に倒れた事件(95年)と言われているが、ワシントンは80年代から銃による殺人事件が多発しており、チーム名にふさわしくないとの思いが募っていたのだろう。
2020年だけでも全米で4.5万人が銃絡みで命を落とした。10年間で43%増という非常に不名誉な数字だ。最近もニューヨーク州のスーパーマーケットとテキサス州の小学校で凄惨(せいさん)な乱射事件が相次ぎ、前者ではアフリカ系米国人が10人射殺され、後者では児童19人と教員2人の命が奪われた。ともに容疑者は18歳の少年で、殺傷能力の高い半自動小銃を合法的に購入していた。弔意を示し、連邦政府の建物に半旗を掲げる日がしばらく続いたが、ここへ来て銃規制の機運がまた高まりつつある。
ただ、抜本的な対策は望むべくもない。多くの人が銃を自由や自律の象徴としていることもあるが、合衆国憲法修正2条で国民の武装権を保障しているのが最大の理由だ。それ故、連邦や州政府レベルで銃を規制する法律を作っても、購入や所持のハードルを高く設定すると、裁判で違憲判決が下る可能性が高まる。現在の最高裁は憲法を厳格に解釈しがちな保守派の判事が多いのでなおさらだ。
ただ、修正2条を含む「権利の章典」が実施されたのは独立国家として…
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週刊エコノミスト
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