新規会員は2カ月無料!「年末とくとくキャンペーン」実施中です!

国際・政治 ワシントンDC

日系人収容所跡で10年前に見つかった野バラにピンクのつぼみ=小林千代

80年ぶりに開花した奇跡のバラ 強制移住耐えた日系人の歴史=小林知代

 不毛地帯が広がるコロラド州で見つかった野バラの花が、80年ぶりに咲いたというニュースが5月に米国で話題になった。小さなピンクのつぼみを見せた野バラは、銃撃事件などで暗くなっていた米国人の心に明るい光をもたらした。この野バラは、第二次世界大戦のさなかの、日系米国人の強制収容施設「グラナダ・リロケーション・センター」の跡地で、理不尽な歴史を耐え抜いた花だったからである。

 1942年、ルーズベルト大統領はスパイ行為を防ぐ目的で、ワイオミング州、ユタ州など人里離れた荒涼の地に10の収容所を設け、12万人もの日系人に強制移住を命じた。人種、性別、年齢で差別せず、自由と正義を信条とする米国の精神を真っ向から踏みにじった大統領令9066号は、米国の小学校で誰もが習う米史最大の恥部の一つである。

 バラが咲いた収容所には42~45年にロサンゼルスから移住した日系人が1万人暮らしていた。戦後、収容所は閉鎖され、荒涼の地が残るだけだったが、そこに住んでいた家族の末裔(まつえい)や考古学者などが毎年訪れ、強制収容所の歴史を振り返り、当時のコミュニティーの跡地を調べていた。

日系人の我慢気質

 10年前、その地域を調べていた考古学者のクラークさんが野バラの茂みを発見。この地は雨も降らない乾燥した土地であることから、日系人が移住する前に存在していたとは考えられず、ここに収容された日系人家族が育てたに違いないと考えた。デンバーの植物研究所にその野バラの幹の一部を移し、辛抱強く育てられた結果、今年の春、それが花を咲かせたのだ。バラの一部は、収容当時3歳だったカレン・タナゴシさん(82)=カリフォルニア在住=に贈呈された。タナゴシさんは、収容所…

残り594文字(全文1344文字)

週刊エコノミスト

週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。

・会員限定の有料記事が読み放題
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める

通常価格 月額2,040円(税込)が、今なら2ヶ月0円

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

12月3日号

経済学の現在地16 米国分断解消のカギとなる共感 主流派経済学の課題に重なる■安藤大介18 インタビュー 野中 郁次郎 一橋大学名誉教授 「全身全霊で相手に共感し可能となる暗黙知の共有」20 共同体メカニズム 危機の時代にこそ増す必要性 信頼・利他・互恵・徳で活性化 ■大垣 昌夫23 Q&A [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事