教養・歴史小川仁志の哲学でスッキリ問題解決

人事評価制度を作ることになり、人間の営みを数値化できるのか悩んでいます/133

Q 人事評価制度を作ることになり、人間の営みを数値化できるのか悩んでいます

 最近、新しい人事評価制度を作ることになったのですが、どうしても部員から不満が生じそうで悩んでいます。人間の営みについてすべてを数値化することはできないように思うのですが。

(人事部・40代男性)

A 人は尊厳ある存在で優劣はなく、機械論的な外力による結果の差を評価するのみ

 これはどこの業界でも問題になっていることですね。大学でもそうです。たしかに人間がやっていることですから、完全に数値化して客観的に評価するなどというのは不可能でしょう。いったい、どう考えればいいのか。

 そこで参考にしたいのが、アメリカの作家マーク・トウェインの慧眼(けいがん)です。彼のエッセー『人間とは何か』は哲学的作品だといっても過言ではありません。この中でトウェインは、人間機械論を唱えています。

 人間は機械と同じで、自分の意志や努力ではどうすることもできず、外的諸力によって影響を受け、動かされている存在だというのです。だから業績をほめたりするのには意味がないといいます。

“ゲーム”を評価

 これはペシミスティック(悲観的)な人間観だといわれますが、ある意味で本質をついているようにも思います。彼は、もしシェイクスピアが無人島で生まれ育っていたとしたら、あの偉大な作品は生まれなかっただろうといいます。それはその通りでしょう。

 でも、やはり同じ環境、条件であれば、生み出す成果に差が出た場合、生産性が高い方や優れた業績を上げた方をより高く評価すべきようにも思います。これに対してトウェインは、仮にネズミと学者であっても、原理、機能、過程という点ではど…

残り659文字(全文1359文字)

週刊エコノミスト

週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。

・会員限定の有料記事が読み放題
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める

通常価格 月額2,040円(税込)

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

4月30日・5月7日合併号

崖っぷち中国14 今年は3%成長も。コロナ失政と産業高度化に失敗した習近平■柯隆17 米中スマホ競争 アップル販売24%減 ファーウェイがシェア逆転■高口康太18 習近平体制 「経済司令塔」不在の危うさ 側近は忖度と忠誠合戦に終始■斎藤尚登20 国潮熱 コスメやスマホの国産品販売増 排外主義を強め「 [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事