国際・政治論壇・論調

EUがウクライナとモルドバに門戸開き、ロシアへの対抗姿勢明示=熊谷徹

EU加盟に踏み出したウクライナ

課題は山積、決定まで長期化も=熊谷徹

 欧州委員会のフォンデアライエン委員長は6月17日、ウクライナとその隣国モルドバを欧州連合(EU)加盟候補国に認定するよう勧告した。全ての加盟国首脳が賛成し、両国が司法改革を実施するなど一定の条件を満たせば、加盟のための審査プロセスが始まる。EUはロシア軍との間で激しい戦いを続けるウクライナに重要な「希望」を与える道を選んだ。

 ドイツの日刊紙『南ドイツ新聞(SZ)』は6月18日付電子版で「ウクライナは、EU加盟への最初の重要なハードルを越えた。ゼレンスキー大統領は、『我が国のEU加盟へ向けた重要な一歩だ。ウクライナがEUに加盟すれば、欧州の未来にもプラスになる』と述べた」と報じている。

 ただしSZは、「欧州委員会はウクライナがEUに加盟するには、まだ課題が多いと見ている。両国は、司法制度や経済システムを改革し、汚職・腐敗防止のための仕組みなど、要求条件を満たさなくてはならない。一部のEU加盟国は、ウクライナを候補国と認定することに反対するかもしれない。ウクライナがEUに加盟できるのは数年後、もしくは数十年後になる可能性もある」とも指摘した。北マケドニアは2005年に候補国として指名されたが、17年たった今もEU加盟を果たしていない。

 だがロシアとの戦争が長期化する様相を見せている今、EUの大半の国が、ウクライナを精神的に支援するために、審査プロセス開始に賛成していることは事実だ。

 独公共放送連盟(ARD)のニュース番組ターゲスシャウは、「6月16日にドイツのショルツ首相がフランスのマクロン大統領、イタリアのドラギ首相らとともに初めてキーウを訪問しゼレンスキー大統領と会談した」と報じた。ARDによると、ショルツ首…

残り665文字(全文1415文字)

週刊エコノミスト

週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。

・会員限定の有料記事が読み放題
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める

通常価格 月額2,040円(税込)

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

4月2日号

バブル超え 日本の実力24 実体経済と乖離する株高にたまるマグマ■編集部26 株価4万円 私はこう見る マネー資本主義が作った壮大なバブル■澤上篤人27 株価4万円 私はこう見る 割高感なく急速な調整はない■新原謙介28 株価4万円を考える 日本“企業”と日本“経済”は違う■山口範大30 日独逆転  [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事