国際・政治

凶弾に倒れた元首相 「安倍政治」の遺産=編集部

国内外に衝撃が走った安倍元首相の銃撃事件
国内外に衝撃が走った安倍元首相の銃撃事件

 安倍晋三元首相が7月8日、凶弾に倒れた。奈良市で参院選の街頭演説中、白昼のテロ事件は国内外に大きな衝撃を走らせた。

 2012年末に発足した第2次安倍政権が採用した経済政策アベノミクスは、第一の矢として大胆な金融緩和、第二の矢の機動的な財政出動、第三の矢の成長戦略からなる。だが、金融政策に大きく依存した感は否めない。

 日銀法を改正してでも、日銀に大胆な金融緩和を迫った12年末の総選挙。この公約を掲げて政権復帰を遂げた安倍政権は、翌13年1月に2%の物価目標の達成を目指す政府・日銀の共同声明(アコード)を公表。総選挙という民主的手続きを経て民意を得た大胆な金融緩和は、3月に就任した黒田東彦総裁の下で、実施された。

 それから9年余り。2%の物価目標に達しているものの、「資源価格の高騰による一時的な物価上昇」として、日銀は異次元緩和を堅持する姿勢を崩さない。しかし、最大の支援者である安倍氏を失った黒田日銀は、物価高を助長し財政規律を弛緩(しかん)させている異次元緩和政策を続けられるのか。

 首相在任中、2度の消費増税を実現。長引くデフレ不況を異次元緩和と機動的な財政政策で、過度な円高を是正し、株高に転換させた功績は高く評価される。しかし、「日銀は政府の子会社」として、事実上の日銀による財政ファイナンス(穴埋め)を容認し、財政再建派をけん制。その一方で、防衛費の増額を求める姿勢には疑問視する声も少なくなかった。

 歴代最長政権を築き、退任後も自民党最大派閥を率いた実力者の急死は、今後の金融・経済・財政政策、さらに日銀総裁人事にも影響するだろう。

(編集部)

インタビュー

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

4月30日・5月7日合併号

崖っぷち中国14 今年は3%成長も。コロナ失政と産業高度化に失敗した習近平■柯隆17 米中スマホ競争 アップル販売24%減 ファーウェイがシェア逆転■高口康太18 習近平体制 「経済司令塔」不在の危うさ 側近は忖度と忠誠合戦に終始■斎藤尚登20 国潮熱 コスメやスマホの国産品販売増 排外主義を強め「 [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事