資源・エネルギー鎌田浩毅の役に立つ地学

震度が小さい遠くの地震で高層ビルが大きく揺れるメカニズム

高層ビルと長周期地震動

「固有周期」と合えば「共振」/107

 昨年10月7日に首都圏で震度5強を記録した地震は、羽田空港と千葉県浦安市で「長周期地震動」階級の「2」を観測した。長周期地震動とは、大きな地震で高層ビルがゆっくりと大きく揺れ続ける現象で、階級「2」は4段階のうち下から2番目に当たる。室内の棚にある食器や本棚の本が落ち、高層階では物につかまらないと歩くことが難しい状況である。

 長周期地震動には遠くまで伝わりやすい性質があり、地震が発生した場所から数百キロメートル離れた地域で大きく長く揺れることがある。地震の揺れにはさまざまな成分が含まれていて、建物の性質によって増幅される揺れが異なる。今回の地震は深さ75キロメートルという深い位置で起きたため、地表に到達する途中で関東平野の厚い堆積(たいせき)層を通過し、長周期の成分が増幅された。

 ここで「周期」とは、揺れが1往復するのにかかる時間のことである。低い建物はガタガタといった「短周期」で揺れやすく、高い建物はゆっくりとした「長周期」で揺れやすい。これは建物が「共振」することによって生じる現象で、共振した建物はブランコのように大きく揺れ出し、ひどい場合には倒壊に至る。

 気象庁が決めた長周期地震動階級は、被害の程度に応じて作られたもので、地震の揺れは同じでも、建物が持つ揺れに対する性質によって揺れが増幅されたりする。

 建物にはそれぞれ固有の揺れやすい周期、すなわち「固有周期」がある。これが地震の揺れと合うと建物が「共振」する。この固有周期は、建物の高さとほぼ比例しており、具体的には建物の階数に0.1秒をかけた数字が、固有周期の目安になる。例えば、10階建てでは1秒が固有周期となるので、周期1秒の揺れがやってきたら最もよく揺れる…

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週刊エコノミスト

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