香港返還25年 半ばで破られた「1国2制度」=河津啓介
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香港が英国から中国に返還されて7月1日で25年を迎えた。高度な自治を保障した1国2制度は「50年不変」とされたはずが、その半ばで約束は破られた。
2019年の大規模デモで市民の不満が爆発すると、習近平指導部は香港の頭越しに香港国家安全維持法を制定。1国2制度は死文化し、苛烈な弾圧で自由な社会は破壊された。「愛国者による統治」の名の下、政治から民主派を一掃。英米は「約束違反」と非難するが、中国の見方は全く異なる。
「1国2制度は全世界が認める成功を収めた」。香港を訪れた習近平国家主席は返還25周年の記念式典でそう自賛した。3期目を狙う共産党大会を控え、自らの「成果」を誇示する機会と位置づけたのだろう。
米紙『ニューヨーク・タイムズ』の記事(電子版7月1日)は「反中派への勝利宣言」と表現した。習氏は香港を前回訪問した5年前、「中央政府への挑戦は絶対に許さない」と警告していた。その言葉通り批判勢力を徹底的に抑え込んだからだ。
ただ、いくら祝賀ムードを演出しても社会の閉塞(へいそく)感は覆い隠せない。人材の流出は止まらず、民主派以外からも現状を憂慮する声が上がる。
親中派政治家で、前立法会主席(議長)の曽鈺成氏は香港紙『明報』の記事(電子版6月15日)で「民主派の多くは『愛国者』の定義にあてはまる。長い間、政治から排除すべきではない」と主張した。議会で民主派と論戦を交わしてきた自らの経験から「意見の異なる議員が多いほど市民を代表する立法機関になれる」とも述べた。
穏健親中派として知られ、現在は政界を離れた田北俊氏はネットメディア「香港…
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週刊エコノミスト
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