バイデン政権のIPEFが意外に多くの国を集めた理由=鈴木洋之
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新経済枠組みに期待高まる インド太平洋に「広い網」=鈴木洋之
「Spread your net wide(網を広げろ)」 筆者が米国人からよく聞くアドバイスだ。「自身のネットワークを網のように広げ、その中からどんな小さなチャンスも見つけて生かせ」という趣旨で、特に人間関係がウエットなワシントンDCにおいては、人的ネットワーク構築の観点からも、網を広げる重要性を実感する毎日だ。もちろん相手からはシビアに値踏みされるが。
さて、5月23日にバイデン政権が東京で発表したインド太平洋経済枠組み(IPEF)は、米国の「網を広げる」戦略の真骨頂といえよう。IPEFは貿易協定の形を取らない、有志国による法的拘束力を伴わない緩やかな協力ベースでの経済枠組みで、(1)貿易、(2)サプライチェーン、(3)クリーンエネルギー・脱炭素化・インフラ、(4)税・腐敗防止──という四つの柱から構成される。参加国はこの中からどの分野に参加したいか選ぶことが可能で、参加に当たっての柔軟性が最大のポイントだ。今後、米側は、閣僚級会議も含めた具体的な協議を進める予定だ。
IPEFは米国の市場アクセスにつながるメカニズムではなく、包括的および先進的な環太平洋パートナーシップ協定(CPTPP)に代わる貿易枠組みでもないため、当初は、参加する国は少ないとの懐疑的見方が大半だった。しかし、5月23日の発足時に13カ国が参加を表明し、同26日にはフィジーも参加を表明したことは、米国関係者ですら驚きであった。日本政府も参加国確保に向け、米国を支援した模様だが多くのASEAN諸国の参加を得つつ、日米豪印戦略対話(QUAD)拡大への布石、更には南太平洋地域へのくさび、といったさまざまな切り口や可能性も含める形で、インド太平洋に広い…
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週刊エコノミスト
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