「自分の声」見つけるため、27歳で黒人神学の門をたたいた日本人=ブレイディみかこ
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何かを調べていると、全然関係のない本を読んでいるはずなのに、なぜか知ろうとしていたことや人物が登場して驚くことがある。『それで君の声はどこにあるんだ? 黒人神学から学んだこと』(榎本空著、岩波書店、2200円)に出てきたカール・バルトがまさにそうだった。同書は、「黒人解放の神学」の提唱者、ジェイムズ・H・コーンから学ぶために27歳でマンハッタンのユニオン神学校の門をたたいた日本人著者が、師であるコーンとの思い出に捧げたものである。
コーンは黒人神学を切り開いた神学者として知られているが、「黒人神学」の「黒人」はマルコムXから、「神学」はキング牧師から、と言っていたそうだ。米国で公民権運動が盛り上がっていた1960年代後半、神学という学問は、ストリートで繰り広げられている黒人を解放する運動とどう関わっていくのか。それがコーンの独自の神学の出発点だった。この問いに、西洋の神学者たちによる白人の神学は答えてくれなかったからである…
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週刊エコノミスト
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