ビーチボーイズの支柱を助手席に乗せて、南カリフォルニアを巡りつつ=芝山幹郎
有料記事
映画 ブライアン・ウィルソン/約束の旅路
この天才は「壊れ物」だった。そんな彼の安息を願う映画
10年前の2012年8月、私は幕張の野球場へビーチ・ボーイズのコンサートを見にいった。中学生のころから好きなバンドで、〈アイ・ゲット・アラウンド〉や〈サーフィン・USA〉の楽しさは無双だった。
ただ、この夜の私は、ブライアン・ウィルソンから眼が離せなかった。70歳を迎えた彼が、どんな姿になったのか。どんな声でなにを歌うのか。
ブライアン(ウィルソン3兄弟の長兄)はビーチ・ボーイズの音楽的支柱だ。ミリオンセラーを連発したのは1960年代前半のことだが、そのあとが大変だった。楽しいヒット曲の陰では、高度で複雑なハーモニーを求める悪魔的な才能が身を焼く。メンタル面の脆(もろ)さゆえ幻聴に悩まされ、父親の身勝手な行動にも苦しめられてきた。
残り947文字(全文1313文字)
週刊エコノミスト
週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める