安倍氏なき自民に“学級崩壊”の恐れ 「タカ派配慮」で首相は阻止に腐心=人羅格
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参院選の自民党大勝を境に岸田文雄首相のタカ派配慮が目立っている。安倍晋三元首相の急逝に伴い党の取りまとめが難しくなると危ぶんでいるためだ。
憲法改正を巡っても、従来より踏み込んだ積極姿勢を示したが、状況はひと筋縄でいかない。党内力学が揺れ動く中で9月冒頭に行う内閣改造・党役員人事で、菅義偉前首相の処遇が焦点として浮上している。
「内輪もめが始まるよ」
混迷を予感させる光景だった。安倍氏死去に伴う対応について安倍派は会長職を置かず、塩谷立、下村博文両会長代理による現行体制の当面維持を決めた。
最大派閥(97人)の同派を巡っては、集団指導体制への移行を求める声もあった。確かに世耕弘成参院幹事長、萩生田光一経済産業相、西村康稔同派事務総長、福田達夫総務会長ら有力議員はそろうが、安倍氏との落差は大きい。体制を動かせば、たちまち内紛に陥るおそれがあった。他派の閣僚経験者はNHKドラマになぞらえて「まるで『安倍派の13人』。内閣改造や党役員人事の窓口はどうするんだ。すぐに内輪もめが始まるよ」と評した。
そんな状況を横目に、首相は安倍氏の葬儀を「国葬」で執り行うことを参院選自民大勝の4日後に決めた。1967年の吉田茂元首相以来で、現行法令に根拠となる規定はない。
安倍氏死去を巡っては、官邸で弔意を示す半旗掲揚が死去から3日後の11日だったことや、松野博一官房長官が「半旗は(死去してからの官邸の)翌営業日だった」と説明したことに、批判が出始めていた。内閣法制局からの「閣議決定で国葬は可能」とのゴーサインを踏まえたとはいえ、首相の性急な判断はある種の焦りを感じさせた。
岸田政権の主流派は首相が率いる岸田派に麻生派、茂木派を主体とするゆるやかな「ハト派連合」だ。これを安倍派や菅義偉前首相らの勢力がけん制し、力の均衡を保っていた。実際は、党内タカ派は安倍氏が「重し」となり制御していた。言い換えれば、首相は安倍氏との関係さえ破綻させなければよかった。
だが、安倍氏死去でこの構図は崩れた。中長期的には安倍派が求心力を失い、首相の立場は強くなるかもしれない。だが、短期的には党内秩序が「学級崩壊状態」に陥り、政権が混乱に巻き込まれるリスクの方が大きい。
結局、首相は従来よりもタカ派への配慮を迫られそうだ。首相が憲法改正の発議を急ぐ考えを示したのも、参院選勝利の余勢をかってというよりは、言質を取られぬ範囲で党内向けにアピールした印象が拭えない。
そんな首相にとって地雷となりそうなのが、衆院小選挙区定数「10増10減」問題への対応である。参院選公示を控えた6月16日、政府の衆院選挙区画定審議会(区割り審)は小選挙区の区割り是正案を勧告した。1票の格差を2倍未満に抑えるため10増10減し、全体で140選挙区の線引きを変える大規模な改定案となった。
通常であれば、政府は与党の了承を得たうえで関連…
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週刊エコノミスト
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