南北戦争終結157年 消えつつある南部連合の象徴=西田進一郎
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米連邦議会の議事堂を訪れる見学者たちに最も人気があるのは、中心にある円形の大広間「ロタンダ」だろう。だが、その南側にある「国立彫像ホール」も興味深い。半円形の広間に、全米各州を「代表する2人」の彫像が並んでいる。現在は100体のうち35体がこのホールにある。
久々にホールを通りかかると、青銅や赤銅の像に交じって、ひときわ白い像があるのに気づいた。2日前に除幕されたばかりという像は、左手に黒いバラを持っていた。南部フロリダ州のメアリー・マクロード・ベスーンだった。
ベスーンは、1875年に生まれ、人種差別に立ち向かった公民権運動の草分けだ。黒人の高等教育機関として、現在のベスーン・クックマン大学の前身となる学校を創設するなど、教育者としても知られる。歴代大統領の顧問役も務めた。
功績の大きさを考えれば、ホールに並ぶのは当然かもしれない。しかし、なぜ今ごろになって設置されたのだろうか。
公民権運動家への流れ
彫像は1864年の法律で各州2体までに限られる。だが、2000年以降、州議会と知事の承認で「交換」できるようになった。
フロリダ州は今回、ベスーンの像を置くのに先立ち、南部連合軍のエドマンド・カービー・スミス将軍の像を撤去した。筆者が住む南部バージニア州も、南部連合軍のロバート・E・リー将軍の像を20年末に撤去し、公民権運動指導者のバーバラ・ジョーンズ氏の像を置く予定だという。
南部連合の将軍らをたたえる彫像や記念碑、南部連合旗などを撤去する動きが大きくなったのは15年からだ。
もともと、奴隷制度を思い出させる「人種差別の象徴」と見られることが多かった南部連合だが、15年に南部サウスカロライナ州の黒人教会で起きた銃乱射事件がその印象をさらに悪化させた。黒人9人を射殺した白人男…
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週刊エコノミスト
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