議会休会で選挙戦が過熱する8月、お疲れの米国民はどうしのぐ?=吉村亮太
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前回の大統領選から1年半以上が経過したのに、トランプ前大統領は敗北をいまだに認めようとしない。昨年1月6日の議事堂乱入事件に関する一連の下院公聴会が開催されているが、公正に行われた選挙の結果を何としてでも覆そうとする前大統領と側近たちの姿が浮き彫りなった。
米国のお家芸だったはずの民主主義に対する信頼は大きく傷ついた。これは分かりやすい極端な例かもしれないが、より根が深く切実なのは、民意が政治に反映されにくくなり、自国の統治システムに米国民が懐疑的になっていることだと個人的には考える。具体例を三つ挙げる。
まず顕著なのが地球温暖化問題だ。米国民の4分の3は温暖化の進行を認識し、国際的枠組みに参画することに賛意を示している。しかし、どちらの政党が大統領選で勝利するかで方針が180度変わるのが現実で、中長期的に取り組むべき問題に対し、短期的には軸足がぶれてしまう。毎年のように西では猛暑と干ばつから山火事が猛威をふるい、東では洪水が起きるが、連邦政府レベルの対策は一進一退を繰り返すばかりだ。
次に、米国特有の問題として銃規制がある。乱射事件があとを絶たないが、米国民の6割は規制を強化すべきと考え、9割近い人が購入者の身元調査を義務づけることを支持している。にもかかわらず、最高裁で保守派判事が多数を占める限り、抜本的な銃規制が実施される可能性は低い。今春起きた凄惨な事件を受け、久しぶりに連邦レベルで法律が成立したが、身元調査を行う対象は未成年者に限定された。何もしないよりマシだが民意にはほど遠く、ガス抜きといわれても仕方ない。
そして人工妊娠中絶の問題もしかり。中絶を受ける権利は憲法によって保障されているという解釈に基づく半世紀前の判例を、最高裁が6月末にひっくり返した。同性婚など…
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週刊エコノミスト
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