プロチーム名も祝日も 北米先住民差別の見直し広がる=小林知代
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ローマ教皇が今年7月、カナダ西部のアルバータ州を訪れ、長年の先住民に対する虐待に対してざんげし、許しを求めた。1880年代から1990年代にかけて、カナダでは先住民の同化政策に基づき、約15万人の子どもが親から引き離されてカトリック教会が運営する寄宿学校に入れられ、多くが虐待を受けて命を落としていたことが近年、明らかになった。2015年にはカナダ政府が報告書で、当時の政策を「文化的ジェノサイド」と非難していた。
多民族国家、自由と平等を掲げる開かれた国として人気のカナダ、米国だが、先住民に対する人権を踏みにじる負の歴史が次々にクローズアップされている。
例えば、米国の殺人事件の捜査でも、先住民女性の方が他の人種より被害者となることが多い一方、犯人究明が徹底されないとされる。捜査当局やメディアが白人女性にまつわる事件に過剰に反応する現象を、社会学者は「行方不明白人女性シンドローム」と名付け、先住民の問題は社会の片隅に追いやられる傾向と指摘する。
そんな中、米国では先住民に対する差別や固定観念を見直す動きが顕著になってきた。例えばプロスポーツチームのニックネームの改名だ。ワシントンDCにあるプロアメリカンフットボールチームは2月、90年近く続いた「レッドスキンズ」から「コマンダーズ(統率者)」に改名すると発表した。
先住民を「赤い皮膚」と直接表現した名前とロゴは、民族の侮蔑と批判されてきた。歴代オーナーは改名要求を拒んできたが、フェデラル・エクスプレス、ナイキ、ペプシなどのスポンサー企業からの圧力を受け、改名に応じた。北米大陸を発見したといわれるコロンブスを敬う「コロンブスデー」を祝日から外す州も増えている。
バイデン政権で初めて内務長官に任命されたデブラ・ハーランド長官は先住…
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週刊エコノミスト
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