コロナ禍で仕事への“熱意”が冷めた米国 そんな変化を“仕事”にするのも米国=峰尾洋一
有料記事
今年1月、米メディアFOXニュースが行った、とあるインタビューが注目を集めることとなった。インタビューされたのは、米国の掲示板型ソーシャルサイト「レディット」の掲示板「アンチ勤労(r/antiwork)」の管理者だったドリーン・フォード氏だ。
勤労を否定する主義を採る彼女だが、職業を尋ねられ「犬の散歩。でも哲学を教えることにも興味がある」と回答した。最後にアンカーが「君の授業にぜひ出てみたいね」と嘲笑を交えてコメント。そのやり取りで自らをさげすまれたと感じた多くの掲示板参加者が激しく反発し、ついにはメンバー170万人(当時)の掲示板を一時停止させる事態に発展した。
この「アンチ勤労」はレディットの中でも急成長した掲示板の一つだ。2019年に1万3000人だった参加者数が、21年末には140万人、現時点で210万人まで膨れ上がっている。参加者は「働かなくていいのは金持ちだけじゃない。(Unemployment for all, not just the rich!)」をスローガンに、積極的に手を抜き・仕事をしないことを掲げる。参加者同士で自らの職場環境の劣悪さを語り合い、会社の辞め方を議論する。
決められた時間のみ勤労
積極的に仕事に反対をするほどでなくとも、米国人と仕事との距離感が広がっているとする説もある。世論調査会社ギャラップによる、従業員のエンゲージメント(熱意)調査では、「熱意のある社員」の割合が20年の36%を境に21年は34%、22年は32%と2年連続で下落した。また「Quiet-quitting(隠れ退社)」という言葉も最近よく耳にする。これは、給与に見合った仕事はするが、それ以上の会社への貢献は拒否するということを指す。程度の差はあれ、仕事との関わりを見直す動…
残り613文字(全文1363文字)
週刊エコノミスト
週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める