資源・エネルギー鎌田浩毅の役に立つ地学

桜島/1 7月の噴火警戒レベル5はおなじみブルカノ式

噴煙をあげる桜島(7月25日)
噴煙をあげる桜島(7月25日)

「プリニー式」噴火への移行焦点/111

 鹿児島市の桜島で7月24日、爆発的噴火が発生し、大きな噴石が火口から2.5キロメートル先まで達した。このため、気象庁は一時、噴火警戒レベルを「入山規制」の「3」から「避難」の「5」に引き上げ、近隣住民に避難指示が出された。気象庁が2007年に噴火警戒レベルを導入して以降、レベル5になったのは桜島では初めてである。桜島では6日前の18日から山体の膨張を示すわずかな地殻変動が観測されていた。

 地殻変動は地下のマグマが上昇中であることを示し、さらに膨張が続くと大きな噴火になる可能性がある。例えば、桜島では1914(大正3)年に58人の犠牲者を出す大噴火を起こし、「大正噴火」と呼ばれている。

 今回の噴火は南岳山頂火口で発生したマグマ噴火で、20年にも噴石が3.3キロメートル飛ぶ噴火を起こしたが、それに比べれば噴火の規模はやや小さい。噴火のタイプは「ブルカノ式」と呼ばれ、マグマの上昇により火山内部のガス圧力が高まり、火口を塞いでいた溶岩を吹き飛ばす噴火である。

 大きな噴石がふもとの集落まで飛来すると人的被害が生じる。86年には古里温泉を直径約2メートル(約5トン)の噴石が直撃し、6人が重軽傷を負った。桜島では2020年に432回、21年に145回のブルカノ式噴火が起きており、地元の人々には日常的な光景でもある。噴石が同程度の距離を飛んだ例は過去70年に20回あり、今回も平均的な現象だったが、噴火警戒レベルの判定基準に従えばレベル5に相当するため、住民避難に至った。

規模が異なる「大正」

 一方、大正噴火は今回と同じマグマ噴火だが、メカニズムと規模がまったく異なる。火口から10億トンを超えるようなマグマを長時間放出し、火砕流や火山灰が地表に大量に堆積(…

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週刊エコノミスト

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