国際・政治東奔政走

旧統一教会との癒着が映し出した政治の不作為と日本の衰退=平田崇浩

泉健太代表率いる立憲民主党は「何をやりたい政党か分からない」という印象を与えている(8月10日、同党臨時常任理事会で)
泉健太代表率いる立憲民主党は「何をやりたい政党か分からない」という印象を与えている(8月10日、同党臨時常任理事会で)

「社会全体で子育てする国にします」。これは旧民主党が政権交代を果たした2009年衆院選の同党のマニフェスト(政権公約)に記された一文。旧民主党政権は家庭(世帯)の所得にかかわらず一律に「子ども手当」を支給し、公立高校の授業料を無償化する子育て支援策を推し進めた。その背景にあったのが「子どもは社会で育てる」という理念だった。

 自民、公明両党はこれをバラマキと批判。旧民主党から政権を奪還した第2次安倍晋三政権は所得制限のある児童手当に戻し、高校無償化にも所得制限を設けた。その背景にあったのは、保守層の重視する伝統的な「子どもは家庭で育てる」という理念だ。それは、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の主張とも重なる。

少子化対策の停滞招いた

 安倍元首相に代表される自民党保守派は旧民主党政権の崩壊を伝統保守の復権につなげ、旧統一教会はそれを後押しした。その見返りに安倍氏らは反社会的なカルト教団に、ある種の市民権を付与する役割を果たしてきた。安倍氏の殺害事件を契機として、そうした自民党と旧統一教会の隠然たる関係に批判の目が注がれている。

 少子化・人口減少対策の停滞という一事をもってしても、旧民主党政権の失敗は平成の「失われた30年」を象徴している。

 昭和に築かれた日本の古い社会・経済構造は、経済バブルと冷戦の崩壊に対応できなかった。平成初期に始まった政治・行政改革は、少子化とデフレ不況に象徴される日本の衰退に歯止めをかけ、再び成長軌道に乗せるため、まずは政治構造を政権交代可能な体制に変革しようという試みだった。それはいったん旧民主党政権の誕生によって結実したが、その政権は消費税の引き上げなどをめぐる内紛によって自壊した。

 その揺り戻しが、天皇を頂点とする封建的家父長制へのノスタルジーなのか。2世代、3世代の同居を前提とした大家族時代の価値観にしがみつく伝統保守のイデオロギーと、教祖を頂点とする宗教的家族主義の信仰が結びついた先が「子どもは家庭で育てる」社会なのだとしたら、それを押し付けられる若い世代は救われない。

 日本の衰退に歯止めをかけ、再び成長軌道に乗せるという歴史的使命を課せられながら、政権の自壊という形でそれを投げ出した旧民主党勢力の罪は重い。その歴史的使命は、政権を奪還した自民、公明両党も果たせないまま、さらに10年の時が流れ、今に至る。

 有権者の期待を裏切り続けた政治の不作為。その結果として続く日本の衰退を映し出したのが、自民党と旧統一教会の癒着問題ではないか。それを見て見ぬふりで放置してきた公明党も同罪だ。

 若い世代が働きやすく、子どもを産み、育てやすいジェンダー平等の社会・経済構造に転換していくことが少子化対策の最優先課題だと公明党も重々認識しているはずだ。にもかかわらず、自公連立の維持を優先し、20年も政権を握りながら選択的夫婦別姓制度すら実現できていな…

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週刊エコノミスト

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