教養・歴史鎌田浩毅の役に立つ地学

富士山 噴火時の新避難計画で改定された溶岩流対策 

渋滞防ぎ原則「徒歩」へ転換/113

 現在「噴火スタンバイ状態」にある富士山の具体的な噴火を想定した新しい避難計画の中間報告が出された。静岡、山梨、神奈川の3県などでつくる「富士山火山防災対策協議会」は今年3月、車での避難では交通渋滞が発生することも想定し、溶岩流が3時間以内に到達する地域では徒歩での避難を原則とする考え方を打ち出した。

 今回の新しい避難計画は、同協議会が昨年3月、富士山噴火のハザードマップを改定したことに伴っている。改定したハザードマップでは、将来の噴火が起きる「想定火口」の範囲が拡大し、噴火災害の影響が山麓にある市街地まで大きく広がった。その結果、溶岩流が3時間以内に到達する範囲内の人口が、改定前の7倍の約11万6000人に増加した。

 しかし、これまで前提としていた車での避難は、これだけの人々が一斉に移動した場合、市街地で深刻な渋滞が生じる恐れがある。静岡県富士宮市でのシミュレーションでは、車での避難は徒歩に比べて2倍以上の時間がかかるとの結果が出た。そこで、溶岩流が3時間以内に到達する地域では、歩いての避難が難しい人を除き、原則として安全な場所まで徒歩で避難する方針へと転換した。

 また、新たな避難計画では、溶岩流の到達時間などに応じて避難対象地域を6段階に分けることにした。これまでの避難計画では5段階に分けていたが、3時間以内に溶岩流が到達する範囲を「第3次避難対象エリア」として独立させ、避難指示のタイミングなどを新たに設定した。同協議会では、災害弱者に対する避難方法などをさらに具体的に検討し、2022年度中の最終報告書の取りまとめを目指している。

速くはない溶岩流

 溶岩流の経路は、他の活火山で蓄積した経験から、かなり正確に予測できる。溶岩流の速度は人が歩く…

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週刊エコノミスト

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