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北戴河で総書記3選の認可を長老から得るために習主席が図った妥協策とは=金子秀敏

胡春華副首相に注目すると、もう一つの流れが浮かぶ
胡春華副首相に注目すると、もう一つの流れが浮かぶ

 中国共産党の「北戴河会議」が8月15日、予定通り終了した。翌16日、習近平国家主席は東北地方の遼寧省視察に向かい、李克強首相は南部の広東省深圳に向かった。

 北戴河会議は毎夏、河北省の避暑地、北戴河に現役の党指導部と引退した長老が集まり、党内各派が重要人事や政策を調整する密室会議だ。今年の焦点は秋の第20回党大会で習氏の党総書記3選を認めるかどうかだった。

 習主席と李首相の視察先が南北に分かれたのを見た中国語メディアは、馬車のかじ棒が北を向いているのに車のわだちは南を指す「南轅北轍(なんえんほくてつ)」という熟語を使った。分裂状態を意味する。

 だが、同じ16日の胡春華副首相に注目すると、もう一つの流れが浮かんでくる。北戴河会議で自分の3選を最優先する習主席が、胡錦濤前国家主席や李首相の共産主義青年団(共青団)派と妥協し、胡錦濤氏の直系である胡春華氏を次期首相に抜てきすることに同意したのではないか。

 胡春華氏は16日、中国国際サービス貿易交易会の会議で演説し、「習近平総書記の重要指示の精神をまじめに学習し貫徹する」などと習氏への忠誠を示した。習氏の肩書を「主席」でなく「総書記」とした。これは秋の党大会で習氏の3選を支持する「態度表明」ではないか。

 新華社は同日から2日連続で胡副首相の特集記事を配信した。地味な胡副首相には異例のことだ。

 一方、同日発行の党理論誌『求是』に、昨年1月の習氏の演説「全党は必ず準備を完全にして新発展理念を全面貫徹しなければならない」が掲載された。習氏は党中央の政策は正しく、中央、地方政府の高級官僚がそれを誤解せず正しく執行せよと述べている。

 北戴河会議で長老たちは、習氏は新型コロナウイルス感染症の防疫対策として打ちだした極端な「ゼロコロナ」政策やウクラ…

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週刊エコノミスト

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