不動産が購入者に渡されない?! 中国政府も不動産会社を支援 神宮健
中国では、不動産購入者に対する不動産引き渡しの確保に向けた動きが加速している。
不動産会社の資金難のために、建設工事が停止した建物は以前から問題となっていた。だがここにきて、引き渡されない物件の購入者が住宅ローン返済を拒否する動きが現れた。
中国政府が重視する社会安定を乱しかねないことに加え、消費者の不動産会社に対する潜在的な不信感が増し、不動産販売が低迷することで不動産会社の資金繰りがさらに厳しくなるという悪循環も指摘される。
こうした背景から共産党中央政治局会議は2022年7月、不動産引き渡しの確保について初言及。地方政府が中心となり、引き渡しを確保するとした。
既に一部の地方政府は、金融機関などを巻き込みながら問題解決を図っている。例えば、AMC(資産管理会社)による問題のある不動産プロジェクトの救済だ。AMCは、もとは1990年代末に4大国有銀行の不良債権処理のために作られた金融機関で、企業再生を含む不良債権処理の経験が豊富だ。全国展開するAMC5社に加え、各省のAMCもできている。
報道によれば、人民銀行(中央銀行)は4月にAMC5社と主要銀行18行に対し、リスクのある不動産会社12社のリストを提供し、問題プロジェクトの処理などを話し合っている。
具体的には、各地のAMCが不動産会社などと基金(ファンド)を設立。問題プロジェクトのM&A(合併・買収)などへの利用を目指す。なおM&Aについては、金融当局が21年12月、優良な不動産会社による、リスクのある不動産プロジェクトの買収や金融機関によるM&A融資を促す通知を出している。
また、AMCが資金を融資し、別の力のある不動産会社が問題プロジェクトを代わりに建設する方法(融資代建)もある。融資代建では一部の信託会社も資…
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週刊エコノミスト
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