ピッグサイクルの上昇局面が来た! 中国でも高まるインフレ懸念 真家陽一
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欧米と比べ安定していた中国の物価に、黄信号がともっている。8月の消費者物価指数(CPI)が前年同月比2.5%と2カ月連続で通年目標の約3.0%に近づいた。主因は豚肉価格の値上がりだ。6月は6.0%下落だったが7月は20.2%、8月には22.4%と大幅に上昇した。
背景にあるのが「ピッグサイクル」だ。豚肉価格が上昇すると、養豚業者の増産に伴う供給量増加で価格が下落し、今度は減産することで供給量が減少し、価格が再び上昇、という現象で、中国では3~4年周期で起こる。
近年では、2018年8月にアフリカ豚熱(ASF、旧名アフリカ豚コレラ)が発生、大量の殺処分による供給量減少で豚肉価格は19年3月に前年同月比5.1%の上昇に転じた。
その後は新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、供給面では増産の遅れ、需要面では「巣ごもり消費」などの影響を受け、20年9月まで19カ月連続でプラスに。この間、新型コロナの収束に伴う生産回復もあって供給量は徐々に増加した。そして豚肉価格は20年10月に2.8%下落し、22年6月まで21カ月連続でマイナスの状況が続いたが、供給量減少などの要因で7月から上昇局面に突入した。
生産も消費も世界最大
中国でピッグサイクルが発生する最大の要因は、豚肉が中国人の食卓に欠かせない食材であることだ。価格が上昇してくると、養豚業は売り惜しみ、消費者は買いだめに走り、値上がりに拍車をかける傾向が強い。ちなみに世界の豚肉の生産と消費に占める中国の割合はそれぞれ44.1%、48.3%でともに最大となっている(21年、米国農務省統計)。
また、農家の副業など小規模な養豚業者が多いことから、豚肉価格の上昇局面では養豚への参入、下落局面では撤退が容易に起こりやすく、価格変動を助長している…
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週刊エコノミスト
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