教養・歴史小川仁志の哲学でスッキリ問題解決

今のロシアなど権威主義的な国の台頭を、個人で予防できることは?/143

Q 今のロシアなど権威主義的な国の台頭を、個人で予防できることは?

 世界には権威主義的な国が増えてきていると聞きます。今のロシアを見ていると、そもそも権威主義の台頭を予防することが必要であるように思うのですが、何か個人にできることはあるでしょうか?(中学教諭・30代女性)

A 民主主義の育成が権威主義台頭の予防。そのための機関創設を呼びかけては

 ロシアのウクライナ侵攻は、権威主義の表れと見ることは可能ですね。だから今回の戦争についても、単に2国間の争いではなく、むしろ民主主義か権威主義のいずれが世界の秩序を担うかの覇権争いだという人もいます。「ミスター・デモクラシー」とも称されるアメリカの政治学者ラリー・ダイアモンドもその一人です。

 ダイアモンドは民主主義研究の第一人者で、そもそも近年民主主義が衰退し、代わりに権威主義国が台頭してきていることに警鐘を鳴らしています。彼によると、権威主義国台頭の背景にあるのは、「シャープパワー」と呼ばれる新たな力だといいます。

シャープパワーの蠢動(しゅんどう)

 軍事力や経済力を表すハードパワー、そして文化活動などを通して行使されるソフトパワーに対して、シャープパワーとは、これらの間にあるグレーゾーンで行使される力のことです。

 具体的には、SNS(交流サイト)を利用した介入によって、民主主義社会に分裂をもたらすような行為をいいます。それは、多岐にわたる工作活動によって、民主主義の奥深くに浸透し、社会を弱体化させていくのです。その結果、権威主義国の傘下に置かれてしまいます。実はロシアも長年、自国及び他国に対してこうしたシャープパワーを用いてきたといいま…

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週刊エコノミスト

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