米中間選 銃規制法が28年ぶりに成立したが、下院選への影響は限定的 西山隆行
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中間選挙で共和党が銃規制反対派の支持を集める可能性もあるが情勢は不透明だ。
最高裁は一部州の銃規制に違憲判決
銃規制は米国政治の重要争点の中でも民主党と共和党間での相違が顕著で、政治・社会の分断を象徴的に示すテーマである。米国では世論が穏健な銃規制(購入対象の制限など)を支持しているにもかかわらず、銃規制が強化されることは長い間なかったが、今年6月、実質的な内容を持つものとしては1994年のブレイディ法以来、28年ぶりの銃規制法が成立した。
世論に反して銃規制が進展しなかったのは分極化と2大政党の対立激化の傾向が鮮明になり、議会が膠着(こうちゃく)状態になっていることが主な理由だ。この構図は大きく変わっていない状況で、銃規制に批判的な共和党から上院で15人、下院で14人の賛成を得て超党派で法制化されたのは、画期的な成果といえる。
同法は、銃の販売に際し若年購入者の身元調査を強化したり、交際相手への暴力の前科がある人物への銃販売を制限する。また、自身や他人に危害を加える恐れのある人物から銃を一時的に没収する法律(レッドフラッグ法)を州政府が成立させた場合、その州政府を財政的に支援する仕組みなどを整えている。
歴史的立法が可能になった背景には、トランプ派への対応を巡って共和党内で混乱がみられたこと、銃規制反対派として知られる全米ライフル協会(NRA)のスキャンダル、NRAの支持者の高齢化など銃規制反対派の弱体化などが考えられる。一方、元ニューヨーク市長で、世界的な富豪のブルームバーグ氏が銃規制推進派候補を財政的に支援して、利益集団政治におけるNRAの圧倒的優位が崩れたことも重要な要因だ。
接戦州での動員に注目
銃規制問題が今回の中間選挙に及ぼす影響を評価するのは難しい。同法が歴史的な立法であるのは間違いないが、殺傷力が高い銃の購入可能年齢の引き上げや大容量弾倉の禁止は見送られるな…
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週刊エコノミスト
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