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資源・エネルギー 鎌田浩毅の役に立つ地学

国内50の常時観測火山に対し、火山学者は40人台

2000年の三宅島噴火の火山灰を調査する研究者 伊藤順一氏撮影
2000年の三宅島噴火の火山灰を調査する研究者 伊藤順一氏撮影

観測体制も防災体制も危機的状況/115

 日本には海底火山を含めて111の活火山があり、その数は世界全体の7%に相当する。世界有数の火山国であるが、火山が災害を伴うという認識は決して高くない。昨年10月20日の阿蘇山・中岳噴火では、2日前から福岡管区気象台が活発化に対する警戒を呼びかけており、噴火当日の朝に登山路を閉鎖したが、実はその前に登山客が入山してしまっていた。

 こうした原因の一端は、火山災害を研究し市民に伝える研究者の数が圧倒的に足りないことにある。2014年の御嶽山噴火では死者・行方不明者合わせて63人が出た。当時、日本の貧弱な火山研究体制がクローズアップされたが、8年たった現在でも改善されていない。その背景には、研究予算とポスト不足という長年の構造的な問題が横たわっている。

 現在、火山の監視と噴火予知は気象庁が担っている。50の活火山を「常時観測火山」に指定し、地震計や傾斜計、監視カメラなどで24時間体制の観測を行っている。そのデータは全国に四つある気象庁の「火山監視・警報センター」と本庁に送られ、一部は大学でもモニターしている。

削減続く交付金

 ところが火山を専門とする気象庁職員は非常に少なく、常時観測火山をカバーする人員が不足している。火山防災では大学と研究所の火山学者も共同で重要な役割を担ってきたが、研究者の減少傾向が止まらない。

 国が04年の国立大学法人化以後、運営費交付金の削減を続けた結果、研究費が減るだけでなく退職した火山研究者のポスト補充が行われていない。そのため、活火山の観測と調査に大きな支障を来している。そもそも噴火予知は長期間の観測データがあってはじめて可能だが、その継続が難しくなっている。結果として50の常時観測火山に対する観測と防災体制が危機に…

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