経済・企業 FOCUS
物価高への3兆円対策が効果薄とされる理由 木内登英
急速な物価高を受け、政府は9月9日、総額3兆円規模となる追加の物価高対策を決めた。9月末に期限を迎えるガソリン補助金制度の延長、製粉会社などへの小麦の政府売り渡し価格の据え置きなどの対策を講じる。また、住民税非課税世帯に対して1世帯当たり5万円を給付することを新たに決めた。全世帯の約27%に相当する約1600万世帯が対象で、総額9000億円程度となる見通しだ。
現在の物価高は、エネルギー、食料品の価格上昇が中心で、それらへの支出は低所得層ほど消費全体に占める比率が高い。つまり、低所得層ほど受けるダメージが大きくなることから、低所得層をターゲットとする家計への負担緩和策を講じることは重要である。
しかし、住民税非課税世帯は4世帯に1世帯以上の割合で存在しており、今回の物価高で生活が追い込まれている人たちをピンポイントでは絞り込めていない。というのも、給付の条件として資産状況は反映されないため、収入が少なくとも高額な資産を所有し、本来給付の必要のない高齢者層などが一定数いるとみられるからだ。所得水準だけでなく資産情報なども含めた把握と迅速な給付に向けた制度の構築が望まれる。
給付金のような一時的な所得増加は、貯蓄に回る割合が高くなる傾向がある。内閣府の試算によると、これまでの給付金の25%が消費に回った。これに照らすと、今回の9000億円程度の住民税非課税世帯への給付は、個人消費を2250億円程度押し上げると試算される。経済効果としても限定的なものになるだろう。
「円安倒産」も出現
さらに政府が講じる物価高対策の効果をそいでしまいかねないのが、足元で急速に進む円安だ。ドル・円レートは24年ぶりの円安水準の更新を続けており、9月7日には145円直前にまで達した。
円安による輸入コス…
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週刊エコノミスト
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