コメ問題の本質を農地に見いだした若き農学者=黒崎亜弓
有料記事
『日本のコメ問題』 著者 小川真如さん(農学者)
農地が「余る」時代を見すえ、農業のもつ多様な価値を問う
ウクライナ危機以降、にわかに食糧安全保障がクローズアップされている。日本は輸入が途絶えれば食料危機に陥ると懸念される。ところが、気鋭の若手研究者のまなざしははるかその先を見通す。
「人口が減ってゆく日本では、全人口を養うのに必要な農地が実際の農地よりも小さくなる時代が30年後にもやってきます。大事なのは、余る農地からどう恵みを得るかという視点です」
本書は、コメ問題に対していくつかのコペルニクス的転回を示す。一つは、問題の本質をコメでも農家でもなく「田んぼ」に見いだしたこと。二つ目は、複雑な政策の来歴を大きな転換点で整理したこと。戦後コメが自給できるようになり、今度は余り始め、さらに余った田んぼの使い方のコントロールを強化している。
「コメを巡ってはさまざまな論がありますが、誰もが最低限、共感できる議論のベースとして本書を書きました。論の違いを突き詰めるより、それぞれの論に内包されているけれど無視されてきたことに目を向ける方が重要です」
その考え方の根っこには、農業経済学の現状に対する問題意識がある。同時刊行した『現代日本農業論考』(春風社)で問うた。2冊は25年にわたる研究の集大成という位置づけだ。35歳で研究25年間? 原点には小学校の行き帰りに田んぼを観察していたことがあるそうだ。
農地が余る未来を視野に入れると、現状の見え方も変わってくる。農地を保つ動きと減らす動きがせめぎ合っているのだ。確かに、農地が減れば余る事態は先延ばしされる。
「いま農林水産省は農地を守ろうと唱えながら、農地の林野化を推進しています。一方で国土が狭いとばかりに山林が切り開かれてメガソーラー(大規模太陽光発電)が作られている。どこかおかしくないですか。
農地が余るのは有史以来の出来事ですから、過去…
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週刊エコノミスト
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