経済・企業

専門家は円買い介入に何を見た?

 政府が9月22日に実施した円買い介入を、専門家はどう見るか。元財務官の篠原尚之氏、東京女子大学特任教授の長谷川克之氏に聞いた。(止まらない円安 ≪特集はこちら)

1ドル=70円台はもうない 篠原尚之

 介入はもう少し我慢すると思ってみていた。銀行の外為担当者に日銀が為替取引の水準を聞き取りする「レートチェック」を始めた時点で、介入の準備はできていたのだろう。

 メディアを中心に「円安=悪」というイメージが作られ、一般の人にも広がりを見せていたことも影響したかもしれない。

 ただし、当局が通貨防衛ラインを設定したと思われたら危険だ。投機筋の餌食になり、崩壊するリスクがある。あくまでも急な為替の変動(今回は円安)への対応ということにしないといけない。2回目以降があるなら、過度な変動に対する対応となる。うまくそのタイミングをとらえられるかどうか。

 政府と日銀の政策の方向性が正反対であることが、明確になったことは懸念材料だ。異次元緩和に固執して円安誘導する日銀に対して、政府は過度な円安には介入で対応するという構図は、投機筋に狙われやすい。

 米国は、今回の円買い介入について「日本の行動を理解している」と表明したが、円相場の急変動を抑える目的だから容認した。米国は介入には関わっていない、日本単独だったことも明らかにしている。円高(ドル安)水準への継続的誘導は、米国には理解してもらえないだろう。インフレ退治に米国も余裕はない。

 心配なのは円の弱さだ。今の円安は、いずれ円高に反転する局面を迎えるだろうが、以前のように1ドル=70円台にはならないだろう。対外収支は悪化しており、中台問題はじめ日本周辺の地政学リスクは、円安に作用する。(談)

(篠原尚之・元財務官)

ドル高が揺さぶる「国際金融」 長谷川克之

 日本の円買い介入は、ドル高への警鐘となったのではないか。米連邦準備制度理事会(FRB)は急激な利上げと膨らんだバランスシート(資産・負債)の圧縮のための量的引き締め(QT)を同時に進めている。8%を超える歴史的なインフレ(物価上昇)退治に、景気後退を覚悟のうえの対応だ。

 一方の日銀は異次元緩和政策を堅持。この日米の金融政策の方向感の違いや金利差拡大が円安・ドル高につながっている。資源、食糧高による日本の貿易赤字の拡大も需給面から円安を促す。

 ただ、ドルは英ポンドやユーロといった主要通貨や、中国はじめ新興国通貨に対しても独歩高にある。英国は新首相のもとで、積極的な財政出動に伴うインフレや財政への懸念から金利上昇。中国人民元は1ドル=7元台にまで急落し、資本逃避や国内不動産バブル崩壊による金融不安も警戒されている。

 日本の単独介入だけでなく、協調介入実施に向けた働き掛けを行うべきだろう。ドル高を起点とする国際金融市場の混乱は確実に深まりつつあり、当局間での危機感を共有する時期に来ている。

 欧米そろっての協調介入が難しくても、まず英国の協力を取り付ける「日英同盟」の結成の余地は十分あるのではないか。対ドルではプラザ合意の1985年以来、37年ぶりの水準にまで暴落しているポンド、財政への信認が揺らぎ利回りが一日に0.3%も急騰する英国債。「悲観論の帝王」とも呼ばれる米経済学者のヌリエル・ルービニ氏はツイッター上で「英国の国際通貨基金に支援要請する」と予想しているほどだ。(談)

(長谷川克之・東京女子大学特任教授)

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