教養・歴史小川仁志の哲学でスッキリ問題解決

世の中を変える大きなビジョンと、その実行力を身につけるには?/146 

Q 世の中を変える大きなビジョンと、その実行力を身につけるには?

 政治も経済も、世の中を変えるには大きなビジョンを掲げ、それを実行する強い力がいると思います。今の日本にはそうしたビジョンや実行力が欠けているように思うのですが。(執筆業・50代女性)

A 国家に委ねず、個々人が「開かれた社会」を意識し、責任を持って行動の端緒を見つける

 ビジョンと実行力。たしかに今の日本には欠けているかもしれませんね。政治に関しては政府もその都度ビジョンを掲げますが、なかなか国民全体に浸透しません。それは実行力に問題があるのでしょう。経済もそうですね。その都度の世の中のトレンドのようなものはあっても、それは必ずしもビジョンとまではいえないような気がします。

 ではどうすればいいのか? 今回参考にしたいのは、イギリスで活躍した哲学者ポパーの思想です。彼は『開かれた社会とその敵』という有名な著書の中で、プラトンやマルクスといった偉大な哲学者たちを批判しながら、世の中の変え方について論じています。

個人の自由を尊重

 例えばプラトンの場合、賢者が無知な多数者を支配するというユートピアを構想したと分析します。しかしこの発想は、大きな善のために、個々人の自由を犠牲にする「閉ざされた社会」をもたらすというのです。

 あるいはマルクスについては、その少し前の時代の偉大な哲学者ヘーゲルの歴史主義を受け継ぎ、やはり個人の力を無力化してしまったと批判します。歴史主義というのは、歴史の大きな力と動きの中で、個人は無に等しくなるとする立場です。そうしてある一つの歴史の法則を発見した人間や指導者だけが世の中を変えると考えるのです。

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