教養・歴史小川仁志の哲学でスッキリ問題解決

悩み事を聞いてくれる人が欲しいが、方法を教えてください/147

Q 悩み事を聞いてくれる人が欲しいが、方法を教えてください

 悩み事を相談する相手がいません。別に解決してほしいわけではなく、ただ聞いてほしいのですが、一方で自分のプライバシーを知られたくはありません。どうすればいいでしょうか?(保険会社勤務・50代女性)

A コンティネンティアと呼ぶ心の調整機能を駆使し、「告白」してみよう

 こんな時キリスト教徒なら教会の中の告解場で自分の悩みや心の葛藤を打ち明けるのかもしれません。でも、日本では普通はそういう場は少ないでしょう。だから親友や家族などに打ち明けるのでしょうが、それでも何もかもさらすのはちゅうちょするものです。

 そこで参考にしたいのは、古代ローマの哲学者アウグスティヌスの思想です。彼はまさに『告白』という著書の中で自らも正直な気持ちを告白し、そして告白という行為の意義自体について論じています。

 ただ、ここでいう告白は、決して過去の自分の過ちをざんげするものではありません。

 そうではなくて、自分は過去においていかなる人間だったのか、そして現在においていかなる人間なのかをありのままに打ち明けるものなのです。そうやって心の整理をするわけです。アウグスティヌスにいわせると、心は決して確固たるものではなく、むしろ集中と分散の間を行き来する不安定なものです。

心の整理を意識

 だからこそ、告白という形で常に整理をする必要があるのです。心を落ち着けるために。それこそが告白の目的であるといえます。彼が「慎み(コンティネンティア)」と呼ぶ心の調整機能を用いて、心の中心に立ち戻るのです。そうしてはじめて、私たちは心の整理をすることができます。その意味で告白と…

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