教養・歴史小川仁志の哲学でスッキリ問題解決

会議の時間が長いと部下から苦情がきます/148

ガブリエル・マルセル(1889〜1973年)。フランスの哲学者。キリスト教的実存主義の立場を掲げる。劇作家としても知られる。著書に『存在と所有』など(イラスト:いご昭二)
ガブリエル・マルセル(1889〜1973年)。フランスの哲学者。キリスト教的実存主義の立場を掲げる。劇作家としても知られる。著書に『存在と所有』など(イラスト:いご昭二)

Q 課長に昇進し会議の主宰も多くなったが、時間が長いと部下から苦情しきりです

 課長になってから会議を主宰する機会が多くなったのですが、どうしても長引いてしまいます。話すべきことがたくさんあって仕方ないとはいうものの、部下から苦情も出始めており困っています。小手先の工夫はいろいろとしているのですが……。(流通業勤務・40代男性)

A 他者を所有するのをやめ「存在」の尊重へと意識を変え、相手の身になり考えよう

 私も公務員時代、時間を気にしない上司に悩まされた経験があります。こっちも仕事があるのに、長々と質問されるのです。こういう人に一度捕まると大変です。ただ、その上司は悪気があるわけではなかったのです。

 相談者ももちろん悪気があって会議を長引かせているのではないと思います。その証拠に、すでにいろいろと工夫されているといいます。ただ、それらが機能していないのは、他者に対する意識に問題があるからだと推察されます。

 そこで今回は、フランスの哲学者ガブリエル・マルセルの思想を参考に考えてみたいと思います。マルセルはまず、「私は身体である」という基本テーゼを立てます。その上で、私たちが自分以外のものにかかわる際、身体を媒体にしているといいます。人でも物でも、何かとかかわるには、身体を通して行うよりほかないということです。

所有領域の拡大を抑制

 そして私たちは、身体を使って物事を手に入れようとします。これが欲しい、あれが食べたい、この人と話したい、あの人と一緒にいたいというふうに。マルセルは、こうした態度を「所有」と呼びます。欲望を持つ人間は、所有領域を広げようとする生き物なのです。まさに手を使い…

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