間もなく10年「一帯一路」、実利支援から治安関連へシフトの兆し 河津啓介
有料記事
中央アジアでは19~20世紀、大英帝国とロシア帝国が「グレート・ゲーム」と呼ばれる勢力争いを展開した。今、米中対立やロシアのウクライナ侵攻で、再び大国の思惑が交錯する場になりつつある。
中国の習近平国家主席は9月、ウズベキスタンで開かれた「上海協力機構(SCO)」の首脳会議に出席し、ロシアのプーチン大統領と対面で会談した。習氏の外国訪問は新型コロナウイルスの流行が本格化してから実に2年8カ月ぶり。「外遊先に中央アジアを選んだのは、北京がユーラシア大陸の中心で優勢になったという自信の表れだ」。シンガポールの『ストレーツ・タイムズ』紙への寄稿(電子版9月20日)で、S・ラジャラトナム国際研究院のラファエロ・パントゥッチ上級研究員はそう指摘した。
パントゥッチ氏は「ウクライナでの戦争で、ユーラシア中心部におけるロシアの信頼と力は失墜した。論理的にその空白を埋められるのは中国であり、今のところ最も明白な受益者といえる」と分析した。
中国にとって、中央アジアは国境を接し、国内の安定に関わる地域だ。資源の供給源であり、経済圏構想「一帯一路」の要衝でもある。ロシアを経由せず欧州に至る物流ルートとしても重みが増している。
今回の外遊に関する中国メディアの報道は、ウクライナ侵攻を巡る温度差が露呈した習・プーチン会談よりも、中央アジア諸国との密接な関係に焦点を当てていた。
国際社会で多数を占める途上国の取り込みは、米主導の国際秩序に対抗する中国の外交戦略の柱になっている。
「習氏のビジョンは、『普遍的価値』ではなく、『共通の利益』を土台に発展する世界秩序だ」。香港の英字紙『サウスチャイナ・モーニン…
残り711文字(全文1411文字)
週刊エコノミスト
週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める