独政府がガス・暖房費に補助金12兆円超を用意するも中小企業は不満 熊谷徹
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ショルツ独政権の諮問機関・ガス委員会は10月10日、市民・企業のエネルギー費用負担の高騰を防ぐために、来年からガスと地域暖房の料金に上限を設定することを提言した。しかし企業の99%を占める中小企業からは不満の声が上がっている。
ドイツ日刊紙『フランクフルター・アルゲマイネ(FAZ)』は次の通り報じた(10月11日付)。「負担抑制策は2段階に分けて行われる。まず政府は、今年12月の家庭と中小企業のガス・地域暖房料金を全額負担する。次に来年3月1日から2024年4月30日まで、家庭・中小企業のガス料金に1キロワット時(発電量換算)当たり12セント(16・8円)、地域暖房料金に9・5セントの上限を設定する。これを超える額は、政府が負担する。家庭と中小企業のガス消費量の約80%が政府補助金により安くなる。年間消費量が150万キロワット時を超える製造業の大口需要家約2万5000社の産業用ガス料金の負担額について、来年1月1日から1キロワット時当たり7セントの上限を設ける」。政府が投じる補助金の総額は、910億ユーロ(12兆7400億円)に達する見通し。
ドイツ公共放送連盟(ARD)のニュースサイトは10月17日、「これらの措置が実行されると、年間ガス消費量が2万キロワット時の標準世帯の年間負担は1056ユーロ減る。12月料金を政府が負担することで、家庭と中小企業は50億ユーロのガス・地域暖房料金を節約できる」と伝えている。
同時にガス委員会は、市民に消費量を節約させる効果も狙っている。ロシアのウクライナ侵攻が始まる前には、家庭・中小企業向けのガスの平均価格は1キロワット時当たり約7セン…
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週刊エコノミスト
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