英国は“炭鉱のカナリア” 身構えるアメリカ 岩田太郎
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英国のトラス前首相が打ち出した財源の裏付けのない大型減税策が、英経済に未曽有の混乱をもたらした。減税は撤回され、前首相が辞任することで収拾に向かったが、米論壇では英国の危機から何が学べるかが議論されている。
米ニュースサイト「アクシオス」の経済専門記者であるニール・アーウィン氏は10月20日付の解説で、「金融にストレスがかかっている際には、以前は見えていなかった要因が突発的に爆発し、経済を押し下げ、政権さえ倒れることがある」と総括。具体的には、英国の年金基金が国債利回り低下を見込み、他人資本で借り入れをして利益を高める戦略を採用していたが、トラス前政権の政策を受けて予想に反し利回りが急上昇。年金基金の多くが、損失をカバーするのに十分な手元資金を持っていなかったため、「英国債を損失覚悟で投げ売りし、それが金利をさらに高め、さらなる国債の売りを誘った経緯があった」と説明した。
またアーウィン氏は、「米国では2007年に、(安全だと見られていた)サブプライム住宅ローンが不良債権化して、米財務省が大手金融機関を救済する事態になったし、08年には仏金融大手ソシエテ・ジェネラルの不正取引に起因した損失で市場の売りが膨らみ、米連邦準備制度理事会(FRB)が0.75%の緊急利下げを実行するなど、隠された問題はいずれ巨大な形で表面化している」と述べ、さらなる金融上の問題が突如破滅的な形で表れる可能性に警鐘を鳴らした。
ノーベル経済学賞受賞者であるシカゴ大学のダグラス・ダイヤモンド教授も10月16日付の米ニュースサイト「インサイダー」に対し、「突然の政策変更は、『恐怖そのものに対する恐怖』を呼ぶ…
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週刊エコノミスト
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