トラスノミクスに「ゾンビ思想」批判、スナク路線にも「壊滅的失敗」論 増谷栄一
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就任50日で辞任に追い込まれたトラス前英首相からバトンを受けたスナク新首相は、「トラスノミクス(前首相の経済政策)の間違いを正し、経済危機からの脱出を目指す」と、首相就任演説で述べた。スナク政権は前首相とは正反対の財政緊縮政策に大きくかじを切る。
トラス氏はサッチャー元首相の急進的な経済政策(サッチャリズム)を信奉。大規模減税により「英国病」といわれた景気低迷を克服した過去を模範に、大規模減税による景気刺激策を打ち出した。財源の裏付けがなく、国債増発に頼ったため、国債市場の暴落(長期金利の急上昇)とポンドの急落を引き起こし、大誤算に終わった。
ノーベル賞経済学者のポール・クルーグマン・ニューヨーク市立大学大学院教授はすぐにトラスノミクスにかみついた。『ニューヨーク・タイムズ』紙の9月23日付コラムで、同氏は、「今の英国経済は、米国経済と同様、深刻な過熱状態にあり、強い内需によってかなりのインフレが引き起こされ、エネルギー危機にも直面、英国経済は今後数カ月、または数年のうちに困難な時期を迎えると予想していた」と指摘。その上で、「大半の人が予見していなかったのは、(トラスノミクスは)ゾンビ思想の経済政策だった」と痛烈に批判した。
クルーグマン教授はレーガノミクスに代表される、高額所得者への減税の効果が貧困層にも波及していくという供給サイド経済学の理論による経済成長を主張する経済思想を「生きる屍(しかばね)」のゾンビに例えて忌み嫌う。同氏は、「トラス氏が信じた、富裕層への減税(最高税率45%を廃止、40%に引き下げ)が経済成長を強く促進するという命題には何の証拠もない。トラス氏らは…
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週刊エコノミスト
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