米国は利上げドル高で世界経済を苦しめる“悪役”か 岩田太郎
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米連邦準備制度理事会(FRB)がインフレ退治のため強硬な利上げにまい進する中、その副作用によるドル高や利上げ競争などで世界経済が悪影響を受け、ひいては米経済の減速につながるとの論調が、米論壇を中心に高まっている。
世界銀行の公正成長担当副総裁代理であるアイハン・コーゼ氏や同銀エコノミストの菅原直剛氏などが9月19日に発表した「世界的な景気後退はすぐそこか」と題する報告書は、「最近行われている金融引き締めや財政緊縮などの政策はインフレ抑止に役立つと思われるが、各国が同期して行うと相互に効果を強め合う結果となり、世界の経済成長の伸びを減速させる」との見解を示した。
米金融大手モルガン・スタンレーのストラテジストであるマイケル・ウィルソン氏は9月26日付の投資家向け分析で、「歴史的に、(米利上げの結果として)これほど米ドルが強くなった時には、1990年代初頭のメキシコ対外債務危機、90年代後半の米ITバブル崩壊、2008年の世界金融危機に至る住宅バブルなど、金融や経済の危機が起こることが多かった」と過去の例を挙げて説明した。
英『フィナンシャル・タイムズ』紙は9月23日付の論評で、パウエルFRB議長が米利上げの世界的な影響について問われ、「他国で何が起きているのかは認識しているが、自分には国内のインフレ率を引き下げ、国内の雇用を守る使命がある」と答えたことに触れ、「米国経済にとっては最善の道筋なのかもしれないが、米利上げの激しさは、米ピーターソン国際経済研究所のモーリス・オブストフェルド氏が『近隣窮乏化政策』と呼ぶものを引き起こしている」と指摘した。
さらに同紙は、「(利上げのタイ…
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週刊エコノミスト
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