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米経済史に照らしても予想される「最悪級の金融危機」 岩田太郎

大恐慌時代のニューヨーク(1930年12月) 米国立公文書館所蔵
大恐慌時代のニューヨーク(1930年12月) 米国立公文書館所蔵

 米国や世界の経済に関してエコノミストの見解は楽観と悲観に分かれている。そうした中、現状を経済指標や金融政策だけではなく、歴史的な文脈で解釈する評論が増えている。

 ノーベル経済学賞を受賞したコロンビア大学のエドマンド・フェルプス教授は8月24日の米経済専門局CNBCの番組に出演し、「米国は経済成長を取り戻さねばならない。それは、一時の人工的な好景気という意味ではなく、1950年代や60年代のような生産性の成長や力強い経済の上昇のことである」と強調し、過去の活力の再現を訴えた。

 同教授はさらに、「なぜ経済成長が必要かと言えば、労働者の賃金が上昇して士気が上がり、心配も少なくなるからだ。米経済は事実上停滞しているが、そういう時こそ成長率を伸ばす必要がある」と述べた。

 一方、カリフォルニア大学のブラッド・デロング教授は、9月3日の『アトランティック』誌電子版で、歴史的な高成長の構造は戻らないと主張し、以下のように説明した。

「1870年以前は、産業革命で資本主義が発展し、大量生産が盛んになっても、人々の生活はあまり変化がなかった。ところが、このあたりから企業の垂直統合、産業研究、現代的な通信機器、規格化された運送などの改革で、グローバルな経済成長は4倍になり、人々は耕地に縛られた貧困を脱出できた。しかし、こうした発展の期間は、生産性と国内総生産(GDP)の成長ペースが急減した2010年に終わりを告げた。米国経済の奇跡は過ぎ去った」

1970年代との類似性

 翻って、スタンフォード大学のニーアル・ファーガソン教授は9月2日のCNBCの番組で、現在の世界経済が1970年代の様子に似ていると指摘…

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