ガス調達費の増加分は大半が消費者負担に エネ業界救済に走るドイツ政府 熊谷徹
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ロシアの天然ガス供給量削減により、エネルギー企業が倒産するのを防ぐために、ドイツ政府はガス調達費用の増加分の大半を消費者に転嫁することを決めた。
ドイツの日刊紙『南ドイツ新聞(SZ)』は、8月15日付電子版で「ショルツ政権は、10月1日から、ガス消費者に1キロワット時当たり約2・4セントの賦課金の支払いを義務付ける。年間ガス消費量が2万キロワット時の標準世帯では1年のガス費用負担が480ユーロ(6万7200円)増える」と報じた。
賦課金導入のきっかけは、独最大のエネ企業ユニパーが調達費用の急増により経営難に陥ったこと。同社は8月17日の記者会見で、今年上半期に124億1800万ユーロ(1兆7385億円)と創業以来最大の当期赤字を記録したことを明らかにした。
SZによると、ハーベック経済・気候保護相は「低所得層にとって、賦課金が大きな負担になることは間違いない。しかしガスの安定供給を維持するには、賦課金導入はやむを得ない」と述べた。
賦課金額は非営利企業トレーディング・ハブ・ヨーロッパ(THE)が卸売価格を参考に計算し、3カ月ごとに修正する。これまでガス輸入企業12社が調達費用の増加分をTHEに申告。総額は340億ユーロ(4兆7600億円)。これらの企業は調達費用増加分の90%を消費者に転嫁できる。
ドイツ市民・企業のガス費用負担は今後もさらに増える可能性がある。ガス卸売市場で価格の高騰が続いているからだ。8月19日、ドイツの公共放送局ARDウェブ版は、「ガスプロムは、パイプライン・ノルドストリーム1の点検のために、8月31日から3日間にわたりガスの輸送を止めることを発表した」…
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週刊エコノミスト
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