国際・政治東奔政走

旧統一教会問題で後手後手 場当たり的で混乱する岸田政権 中田卓二

参院予算委員会で質問に答えるため資料を見る岸田文雄首相(10月19日)
参院予算委員会で質問に答えるため資料を見る岸田文雄首相(10月19日)

 岸田文雄首相が世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の調査を関係閣僚に指示した。裁判所への解散命令の請求を視野に入れる。ただ、事前に政府内で十分検討したとは言えず、政権批判をかわしたい焦りが透ける。場当たり的な対応は危うい。

 当初は自民党内に「お盆を過ぎれば下火になる」という楽観論すらあった旧統一教会問題。それが尾を引いたのは、首相にも同党にも本気で対応する姿勢が欠けていたからだ。党所属国会議員の自己申告制による「点検」は、教団側との関係が問題視された細田博之衆院議長を対象外にするなどお手盛り感がぬぐえない。8月の内閣改造で首相が再任した山際大志郎経済再生担当相はイベントへの出席などが相次いで発覚し、辞任を余儀なくされた。

解散命令視野に踏み込む

 内閣支持率が続落する中、首相は10月17日、永岡桂子文部科学相や葉梨康弘法相らを首相官邸に呼び、宗教法人法に定められた質問権を行使して教団を調査するよう指示した。この日から衆参両院で計4日間、予算委員会がセットされており、野党の機先を制するのが狙いだった。直後の衆院予算委で首相は自民党議員の質問に「報告徴収、質問権の行使による実態解明、被害者の救済に向けた総合的な相談体制の充実強化、同様の被害を生じさせないための法制度の見直しをしっかりと進めていかなければならない」と答えた。

 歩調を合わせるように、霊感商法などに関する消費者庁の有識者検討会は同じ17日、8月下旬から7回の審議を踏まえた報告書を公表。「旧統一教会については、社会的に看過できない深刻な問題が指摘されているところ、解散命令請求も視野に入れ、報告徴収及び質問の権限を行使する必要がある」と後押しした。河野太郎消費者担当相は、被害者救済に長年取り組んできた紀藤正樹弁護士らを委員に起用し、同庁の守備範囲外のことも自由に議論するよう求めていた。

 質問権は、当該宗教法人が「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為」をした疑いがある場合に行使できる(宗教法人法第78条の2)。解散命令請求の前段の手続きだが、これまで行使されたケースはない。

 10月5日の衆院本会議では、首相も「法人格の剥奪という極めて重い対応であり、信教の自由を保障する観点から、判例も踏まえ慎重に判断する必要がある」と請求に慎重な考えを示していた。それから2週間たたないうちに一歩踏み込んだ形だ。

 首相が調査を指示した翌日、公明党の山口那津男代表は記者会見で「(政府から)事前に説明などは一切ない」と明言し、「信教の自由を確保する上で手続き的な配慮がなされているので、法に基づいて厳格に行っていただきたい」と注文を付けた。創価学会を支持母体とする同党は神経をとがらせている。

 政府の準備不足は国会答弁にも表れた。首相は10月18日の衆院予算委で、民法の不法行為は解散命令請求の要件に入らないと…

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週刊エコノミスト

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