国際・政治東奔政走

大目標を示せず守勢の岸田政権 立憲・維新の“即席連合”も打撃に 人羅格

衆院本会議で日本維新の会の馬場伸幸代表の質問を聞く岸田文雄首相(右、10月6日)
衆院本会議で日本維新の会の馬場伸幸代表の質問を聞く岸田文雄首相(右、10月6日)

 臨時国会は岸田文雄首相ら政権側が旧統一教会問題を巡る対応などで守勢に回っている。立憲民主党が「水と油」の日本維新の会と共闘する奇襲に与党のディフェンスは乱れている。不用意に国会に臨んだ首相は序盤から追い詰められつつある。

判断が裏目裏目に

 参院選勝利後、貴重な3カ月近くをいったい首相は何に費やしてきたのか。そう思わざるを得ない国会の滑り出しだった。

 そもそも、拍子抜けしたのは首相の所信表明演説だ。長期政権を念頭に置いた大目標を据えるべきところが、何の旗印も示さなかった。新しい資本主義のテーマだった「分配」「格差」との表現も消え、「安倍・菅」政権との違いはこれまで以上にかすんだ。

 旧統一教会問題の対応も手ぬるい。首相は3日の所信表明演説の前日にあえて「旧統一教会」と名指しするよう文言を差し替えた。「逃げ腰」批判を懸念しての判断だろう。

 ところがその矢先に、山際大志郎経済再生担当相が教団の総裁と会っていたことが発覚した。山際氏は「記憶にはあったが、不正確なので公表していなかった」と相変わらず浮世離れした説明で世間の失笑を買った。細田博之衆院議長と教団の関係を巡る「記者会見しない問題」も重なり、沈静化どころではなくなった。

 さきの改造人事にあたり、山際氏は官邸サイドに教団との関係を正確に報告しなかったとされる。本来、更迭に値する。ところが首相は、野党の更迭要求を拒否し、ともに火の粉をかぶってしまった。首相の代わりに引導を渡す「嫌われ役」がいない、参謀不在の露呈である。

 長男、翔太郎氏(31)の唐突な政務秘書官起用も波紋を広げた。周辺に相談せず決めたが、政権に逆風が吹きすさぶ中で「身びいき」批判を予想できなかったとすれば、感度が鈍い。

 しかも、この時期に後継ぎ作りを急ぐような人事をすれば、「政権への執着を失ったのではないか」との臆測を広げる。事実、与党幹部には「年末に退陣するハラじゃないか」との疑心暗鬼がある。腹を割って話す相談相手がいないという、孤立した状況も浮き彫りになった。

 そんな首相に追い打ちをかけたのは立憲民主と、与党の「応援団」的存在だった日本維新の会が手を組み、野党第1、第2党の連携が出現したことだ。

 衆院小選挙区「10増10減」の実現や、臨時国会召集を義務づける国会法改正などの共通項を示す形で、共闘に合意した。仕掛け人は新執行部で起用された立憲・安住淳国対委員長である。

 リベラル色の強い立憲と、タカ派政党の維新は不倶戴天(ふぐたいてん)の関係だった。とりわけ維新は、与党に密着しつつ立憲をたたく戦略だった。さきの通常国会では、立憲が提出した内閣不信任決議案に反対票すら投じた。この戦術は党勢拡大に一定の成果を上げてきた。

 そんな共闘に維新が応じたのは岸田政権に事実上の「見切り」をつけたためだろう。馬場伸幸代表による新体制で、路線を動かしやすい時期でもあっ…

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週刊エコノミスト

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