ノーベル賞の「古代ゲノム学」と地学の密接な関連/上
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「猿人」から進化を続けた人類/121
今年のノーベル医学生理学賞が「古代ゲノム学」という新領域を切り開いた独マックス・プランク進化人類学研究所のスバンテ・ペーボ博士に決まった。絶滅した人類のゲノムと進化に関する研究が評価されたが、この研究は実は地学とも密接に関連する。
人類は哺乳類の中では霊長類に属し、2000万年以上も前に栄えた「類人猿」を起源に持つ。その後、類人猿との中間的な性質を持つ「猿人」の時期を経て、700万年ほど前に人類が誕生した。
そのきっかけは800万年くらい前に起きた全地球規模の急激な乾燥化だった。この環境変化に順応し、うまく適応したものが人類になったのである。これが起きたのはアフリカの大地溝帯である(本連載の第59回を参照)。
アフリカで見つかった人類は猿人と呼ばれ、直立二足歩行という特徴を持ち、脳の容量は500㏄程度とゴリラ並みであった。猿人の代表的な化石はアウストラロピテクス・アファレンシスで、身長は140~150センチメートルくらいと小柄だった。別名「ルーシー」として知られる人類直接の祖先である。きわめて原始的な石器を使っていた痕跡がある。
また、440万年前の化石として見つかったラミダス猿人は、直立二足歩行を獲得し、類人猿の祖先と別れて森を出た。
次に200万年ほど前に、猿人から進化した「原人」が、初めてアフリカの外へ出て、ユーラシア大陸へ広がった。原人の最大の特徴は、道具や火を使っていたことにある。脳の容量は1000㏄ほどになり、長い足を持つという猿人とは異なる特徴があった。
代表的な化石として200万年前のホモ・ハビリス、また180万年前のホモ・エレクトスがある。ホモ・ハビリスは石器を使ったことが分かっている。また、ホモ・エレクトスはジャワ原人や北京原人と呼ばれる種類で、現代人並みの体格を持ち身長160~180センチメートルとかなり大型になっていた。
その後、約50万年前にさらに進化した人類が出現した。ネアンデルタール人と呼ばれる「旧人」や…
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週刊エコノミスト
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