新規会員は2カ月無料!「年末とくとくキャンペーン」実施中です!

教養・歴史 鎌田浩毅の役に立つ地学

ノーベル賞の「古代ゲノム学」と地学の密接な関連/下

ネアンデルタール人と人類交配/122

 今年のノーベル医学生理学賞を受賞したスバンテ・ペーボ博士は、我々の所属する現生人類(ホモ・サピエンス)がどこから来たのかという問いに答えるため、約4万年前に絶滅したネアンデルタール人の全ゲノム配列を知る方法を開発した。

 ネアンデルタール人はホモ・サピエンスの祖先ともいわれる「旧人」で、1856年にドイツ西部のネアンデル谷(タール)の洞穴で骨格の化石が発見されたことにちなむ。ネアンデルタール人の脳の容量は1300ccほどで、がっちりとした体格だったとされる。また居住域には葬式跡があることから、死者を埋葬する文化があったとも考えられている。

 さらに遺跡には草花の花粉が見つかることから、花を添えたという説もある。ネアンデルタール人は約40万前からヨーロッパから西アジア一帯で暮らしていたが、約4万年前に絶滅した。

 ペーボ博士は2008年、ロシアのシベリア南部デニソワ洞窟で発見された骨のDNAを解析し、ネアンデルタール人に近い古代人類「デニソワ人」の存在を明らかにした。

 博士は発掘した骨に歯科医のドリルで小さな穴を開け、わずかだけ残っているDNAを取り出して解読することに成功した。

 その結果、ネアンデルタール人は現生人類の直系の先祖ではないものの、我々の祖先と交雑していたことを示す明らかな痕跡を見つけた。

 また、デニソワ人由来の遺伝子は、チベットなど高地での生存に有利に働くことが分かってきた。絶滅したはずの遺伝子が、現存の人類にも影響を与えていることを突き止めたのである。

コロナ感染にも影響

 それまでの学説では、ネアンデルタール人は独自の文化を持っていたが、ホモ・サピエンスとの争いに負けて絶滅し、系譜が完全に途切れたと考えられていた。ところが、博士の研究はネアンデルタール人がホモ・サピエンスと数千年にわたり共存し、かつ交配していたことを明らかにした。

 具体的には、ヨーロッパ人とアジア人の持つDNAの1~4%がネアンデルタール人由来であることが判明…

残り524文字(全文1374文字)

週刊エコノミスト

週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。

・会員限定の有料記事が読み放題
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める

通常価格 月額2,040円(税込)が、今なら2ヶ月0円

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

12月3日号

経済学の現在地16 米国分断解消のカギとなる共感 主流派経済学の課題に重なる■安藤大介18 インタビュー 野中 郁次郎 一橋大学名誉教授 「全身全霊で相手に共感し可能となる暗黙知の共有」20 共同体メカニズム 危機の時代にこそ増す必要性 信頼・利他・互恵・徳で活性化 ■大垣 昌夫23 Q&A [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事