首都直下地震の直後は「群衆雪崩」のリスクも
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首都圏で800万人が帰宅困難に/123
韓国ソウルで10月29日、ハロウィンで繁華街に集まった人が将棋倒しになり、150人以上が死亡する惨事となった。「群衆雪崩(なだれ)」と呼ばれる現象で、大都市で直下型地震が発生した後にも懸念される。
2011年の東日本大震災では、東京都心で震度5強を観測し、ライフラインが止まった。金曜午後の発生だったため、多くの企業は社員に帰宅を促したが、鉄道が不通になり徒歩で帰宅を始めた人々で街があふれた。
国の推計ではこの時、首都圏で発生した「帰宅困難者」は1都4県で515万人に上った。東京都内だけでも352万人となり、人が折り重なって倒れる群衆雪崩が起きる寸前の状況だったのである。
近い将来に首都直下地震が起きると、都内だけで東日本大震災の1.3倍にあたる453万人、また首都圏全体では最大800万人の帰宅困難者が発生すると予測されている。もし東日本大震災直後のように人々が一斉に歩いて帰ろうとすると、都内のターミナル駅周辺で群衆雪崩が起きる危険性は極めて高い。
国の中央防災会議は、首都直下地震の震源となる場所を19カ所想定し、今後30年間に70%の確率で発生すると予測した(本連載の第1回を参照)。また、東京都は今年5月に首都直下地震の被害想定を10年ぶりに見直し、最も大きな被害が想定される「都心南部直下地震」では23区の6割で震度6強以上になるとした。その結果、全壊建物の総数は8万2200棟に上り、最大6150人の犠牲者が出ると推計している。
「成功体験」の誤解
実は、東日本大震災時の徒歩での帰宅を巡っては、大きな誤解が生じてしまった。自宅まで20キロメートル以上を歩いて帰った人も多く、頑張れば徒歩で帰れるという意識が残ったのである。こうした「成功体験」から次回も帰れるだろうと思いがちになる。
実際に東京大学の広井悠教授の調査では、東日本大震災で家に帰れた帰宅困難者の84%が次の大地震でも同じ行動をすると答えている。しかし、首都直下地震が起きれば、…
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週刊エコノミスト
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